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終了・報告

【報告レポート】第3回「地域の企業と協働する~作品の二次利用の際に気をつけるべき視点とは」

開催日
2022年10月13日(木)
時間
15:00〜17:00
場所
①エイブル・アート・ジャパン東北事務局 ②オンライン(Zoom)
講師
講師:伊藤光栄(NPO法人エイブル・アート・ジャパンスタッフ)、柴崎由美子(NPO法人エイブル・アート・ジャパン代表理事)、オブザーバー:千葉拓さん(株式会社藤崎、地域振興担当シニアマネージャー)
概要
アートを仕事につなげる活動が活発化しています。2021年度は、作品(著作物)の二次利用に関する規程を整備し(重要事項説明書や工賃支給規程など)、それを利用者に説明する責任と必要性とを考えました。2022年度は、二次利用の協働先となる企業等と、どのような取り決めを行うと良いのか、その大切な視点を学びました。2022年5月、SOUPが実際に対応した事例から具体的な視点を提案します。
当日は、仙台市の老舗・藤崎百貨店を運営する株式会社藤崎の地域振興担当シニアマネージャー千葉拓さんにもご参加いただき、障害のある人によるアートの利活用や福祉分野との協働をどのように感じていたのかコメントをいただきました。

第3回「地域の企業と協働する~作品の二次利用の際に気をつけるべき視点とは」

■参加者
会場:2人
オンライン;13人

■当日の流れ
14:45 開場および Zoom 開設
15:00-15:10 研修の目的・運営スタッフ紹介、講師・ゲスト紹介
15:10-16:15 Fujisakidayについて~きっかけから企画の全体像
16:15-16:20 休憩
16:20-16:35 アートインクルージョンさんの紹介と協働展開について
16:35-16:45 全体を通して感想、今後の展開について
16:45-17:00 質疑応答

■内容


前半は、株式会社藤崎の千葉さんとエイブル・アート・ジャパン(以下、AAJ)の伊藤により障害のある人のアートとの出あいから、「Fujisakiday」について協働の部分をメインに説明があり、後半は補足や質問タイムにしました。

障害のある人のアートとの接点 ― 「Fujisakiday」について

藤崎が3年前にネーミングライツを取得した「八木山動物公園フジサキの杜」の認知度を上げるため、千葉さんは地域の子どもたちが動物や自然環境に関心を寄せてもらえるようなイベント「Fujisakiday」を企画しました。

ちょうどその頃、東京パラリンピックの閉会式を見てから障害のある人のアートに惹かれた千葉さんが、せんだいメディアテークで開催されたAAJが主催する障害のある人のつくった商品を販売するポップアップショップ「ひだまりのギフト展」に訪れた。これをきっかけに、AAJとの協働が始まりました。
*今回、AAJは、障害者芸術活動支援センター@宮城(愛称SOUP)として活動に参加しました。


「Fujisakiday」は2022年6月11日(土)~12日(日)の2日間、八木山動物公園で「Fujisakiday」を開催され、いろいろな関連企画が行われました。全体については、こちらの特設サイトをご覧ください。

・Fujisakidayホームページ | 株式会社藤崎
https://www.fujisaki.co.jp/fujisakiday/

本多さんとSOUPとFujisakidayとシマウマの赤ちゃんエル公募 ― 二次利用について

今回、「Fujisakiday」の中で作品の二次利用がたくさんあり、アーティスト・本多遼さんとSOUPのつながりから、Fujisakidayでの本多さんと一緒に活動した内容までについてです。また、藤崎との連携で開催したオリジナル商品に採用する作品を募集するための公募と、そこで集まった作品の展開について説明がありました。

◆本多遼さんの作品(事例①)の二次利用


・タイトルロゴ
・ポスター
・スタッフTシャツ
・「お絵かきパラダイス」ぬりえ線画
・ポップアップショップの看板の描きおろし

タイトルロゴについては、随時、藤崎のデザイナーさんと連絡をとり、本多さんと保護者にデザインの確認をとりながらすすめました。
また、報酬については、本多さんが当時、未成年ということもあり保護者の同意を得て、物品によるプレゼントを報酬にし、また発表の機会提供を行いました。

◆シマウマの赤ちゃん「エル」のイラスト公募(事例②)で集まった作品の二次利用

・応募された48点すべてをガーランド(連続旗)にして会場装飾、展示
・マイバッグをつくろうワークショップ
・2作品がオリジナル商品に採用

12月にシマウマの赤ちゃん「エル」が誕生した記念にシマウマをテーマにしたイラストを募集し、オリジナル商品2種に採用される作品を藤崎内で選びました。公募では、仙台市障害企画課よりの一斉メールの効果もあり短期間で48点の作品が集まりました。

公募にあたって、千葉さんと作品の利用条件を確認しあい、公募を開きました。また、実際に作品を利用するにあたっては、各作家へ使用範囲を連絡して展示や商品への使用を進めました。

▼画像:公募時に公開した利用条件(研修会資料より)

動物園にポップアップショップを出店しよう!人気はゴリラパン?! ― イベントでの商品販売について

Fujisakidayのイベント期間中、千葉さんのサポートを受けながら福祉施設等11団体によるポップアップショップ「杜のマルシェin八木山だズー!」(事例③)を出店できることになりました。動物をテーマにした商品のラインナップを構成し、店番もそれぞれの施設職員で時間調整しながら行い、直接、当イベントやお客様の反応をみる機会になりました。

なお、商品は、クッキーやパンなどの食品やハンカチやポーチなどの雑貨など、種類の偏りなく出しました。事業所が元々持っているパッケージに動物をテーマにしたシールを貼ったりするなど、一貫して動物をテーマにしたショップにすることができました。

*支援センターの役割のひとつに、障害のある人たちのイラストや事業所でつくられたアートデザイングッズを販売につなげて、工賃アップをはかる、経済活動をはかる、という役割があります。

本多さんの作品に心を動かされた ― 千葉さんの振り返り

【事例①】本多さんの作品採用について
本多さんの作品に心を動かされたことから、メインビジュアルに採用し、本多さんの思いとデザイナーさんの思いと折り合いをつけるのに時間がかかったのは反省点だが、都度、中間支援であるAAJのサポートもあってスケジュール通り完成させることができました。

本多さんと保護者の思いにより、地元のテレビ局の取材があり、全国でも放映された。今回、地元の動物の大好きなアーティストが作品を発表する場に携われて良かったです。

【事例②】シマウマ「エル」の作品公募について
シマウマ「エル」の商品について、動物園側で魅力のあるオリジナル商品が少ないという課題を持っており、AAJとの協働で作品の公募するに至った。期間の短い中で行ったがたくさんの応募があって良かった、一方、クオリティや内容の精査ができなかったため、次回からはスケジュールに余裕を持って展開していきたい。

【事例③】「杜のマルシェin八木山だズー!」の出店について
事前に企業側からショップ関係者へ、イベントの趣旨や希望を共有したことは良かったです。お客さまも障害の有無にかかわらず、動物がかわいいと言って買っている方も多かった印象でした。

オリジナルのランチバックやポーチがその場で作れるワークショップ!

補足として、アートインクルージョンとSOUPとの協働もあった。
アートインクルージョンが、企業と連携してオリジナルのランチバックやポーチがその場で作れるワークショップを行いました。10種の作品を採用し、関係者を含め多くの方が購入し、初日で売上目標の100枚を達成しました。
ここでの二次利用についても、アートインクルージョンとの合意の上、販売を進めることになりました。

企業との協働について ― 千葉さんの振り返り

千葉さんから全体を通して感じたことがありました。
・企業が前面にでると仙台市の動物公園では、できることとできないことがあることがわかりました(営利目的が難しい)。
・場の提供に徹したことで、協働する団体から良い反応をいただけました。
・百貨店のイメージ、品質を保持すること、また、チームワークのいい現場にするためには、企業側が目的や理由をしっかり共有していくことが大事でした。


<参考サイト>
・FujisakidayのAAJ報告レポート | SOUP
https://soup.ableart.org/program/2022nen/fujisakiday/report/

Fujisakidayのその後、、、

・Fujisakidayオリジナルグッズを、八木山動物公園フジサキの森との他のコラボレーション企画に使用するため、増産することになりました。
・藤崎さんも加入する「青葉通まちづくり協議会」が運営するイベント「AOBADORI MACHI TO HATARAKU」のメインビジュアルに、障害のあるアーティストの作品を使用しました。

Q&Aタイム

Q.参加者:アーティストを提案する基準を教えてほしい。
A.柴崎(AAJ):イベントの対象者は誰か?その方たちに訴求できるアーティストは誰なのか?を考えている。今回は、動物園に来園する層に子どもが多いことから、アーティストの中から子どもに訴求できるアーティストを何人か選定し提案して、千葉さんに本多さんに選んでいただいた。

Q.参加者:マルシェの団体はどういう基準で声をかけているのか?
A.柴崎(AAJ):自発性がある、努力義務を怠らない団体と協働することにしている。SOUPでは、福祉的な販売会はあえてやらず、音楽イベントなどの一般客が買いたい物を買いにくるという場に展開している。11年間、これに関連する勉強会をしており、これに付いてきてきている団体がいる。一方で、毎回、どの団体が該当のイベントにマッチするのか、商品やデザインの品質を見極めながらチームで協議しており、今回は初めて出店した団体の商品(目玉商品は動物パン)が一番の売上をあげた。

Q.参加者:障害のある人の出店では出店料をとらない場合が多いが、今回の説明でバイト代というものが入っていたが、それはどなたのものか?
A.柴崎(AAJ):出店団体の人が3~4時間で1コマずつの立番を義務にした。そこで埋まらなかった部分をアルバイトを雇った。

Q.参加者:このような活動では、お金がかかってくるが、営利とむすびつけずに事業を続けていくのか?
A.千葉さん(藤崎):今後の方向性として、百貨店のスペースに営利目的をもたずに販売するスペースを設けるなどということは考えていない。ただし、いろいろな交渉の形はあると思っている。計画性のある提案であると、よりやりやすいのではないか。

Q.参加者:今回はイベントありきで、SOUPのイベントを見て協働するに至ったが、きっかけがない中で、どうやって企業を巻き込んでいくのか?
A.千葉さん(藤崎):時代が変わってきている。企業価値が上がる取り組みについては、SDGsの17の取り組みだとハードルが高いが、障害のある人に作品発表機会を開くなどはハードルが低い。
お互いのメリットを提示できる、例えば集客するといった注目を浴びるコンテンツ(メディアに取り上げられるコンテンツ)だと良い。

Q.参加者:事業所と企業の間に入る時、二次利用の取り扱いのとき、契約書とは違う形なのか?それとも契約書を交わしているのか?
A.柴崎(AAJ):今回は、小さな規模の業務のため、覚書として説明書類を渡しているにとどめている。

レポート:伊藤光栄(NPO法人エイブル・アート・ジャパン)

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