終了・報告

報告レポート スウプノアカデミア2024「イヤな体験と、みんなの折り合い~ゆるやかな癒し方」

開催日
2024年10月13日(日)
時間
14:00-16:00(13:45受付開始)
場所
せんだいメディアテーク7階 スタジオb
参加人数
合計29人
<参加者12人、付添者2人、ボランティア6人、見学者2人、講師1人、スタッフ4人、手話通訳2人>
概要
これまで経験した出来事や日々の暮らしで、「自分の内側でずっと抱えている気持ち」はありませんか?今回は、悩み事とその付き合い方をテーマに集まって、ゆるりとおしゃべりします。言葉やワークをきっかけに誰かと共有すると、ちょっと楽になるかもしれません。もちろん、話したくないことはムリに話さなくて大丈夫!

[ゲスト]清水葉月さん
[発案者]奏さん
[プログラム担当者]佐竹真紀子

1.対話の時間を過ごそう、と決めるまで

こんにちは。テーマ発案者の奏さんと一緒にプログラムを考えました、佐竹です。
プログラムができるまでのことや、当日の様子を、このレポートで振り返ります。

奏さんはプログラムのアイデア出しをはじめた8月に、過去の体験や抱えている感情を何かの方法で昇華したり癒やしたりできるかについて関心を寄せていました。その中で「これまであまり人に話してこなかった自分のことを誰かに話すって、どういうことなんだろう?」と、語る行為への想像が広がりました。
開催に向けては、安心して語れる「対話」の場を開いてきたファシリテーター・清水葉月さんと一緒に、参加者と当日どんな時間を過ごすかを考えました。

2.当日の様子

「自分のことを話したほうが他の人も話しやすくなるかも」という思いから、奏さんがはじめに自分のエピソードも含めたみなさんへのメッセージを読みました。

葉月さんからは、「対話とは『みんなが自分の言葉で、感じたことを語り合う場』です」と、
いろんな人が混ざる場で安心して語り合うための約束事を説明しました。

その後は少人数のグループに分かれて、対話の時間を過ごしました。初対面の人とも、年齢や性別のちがう人とも、障害の有無にかかわらずテーブルを囲みました。

3.「そのままのわたし」でこの場を過ごす

対話の場には「ここで話したことはここだけの秘密」という約束があるため、レポートでもどんな話が出ていたのかは書きません。
お互いに質問し合い、異なる体験や気持ちに触れる。近い経験を共有する中で、自然と励まし合う。その日集まった人同士で語り、相手の言葉を受け取って、また自分なりの言葉を紡いでいたからこそ、グループごとに話のひろがりが異なっていたのだと思います。

対話の場があちこちにあれば、そこでまた別の人に出会って、その人の気持ちや言葉に触れることができる。その相手から受け取った言葉によって、また違った自分の一面を見つけていくことができるのだと実感しました。

スウプノレコード(参加者の感じたことや学んだこと)

・自分の気持ちを書く、言語化することで自分の考え方のクセに気づく。折り合いをつける方法は1つではなく、アウトプットする方法や他人へ意識を向ける方法など、色々な方法があること。アウトプットするか、他へ意識を向けるか、イヤなことの程度によっても違いがありそう。

・同情と共感のちがいを実践。おりあいは現在進行形。価値観のボーダーラインでおりあっているよ。

・思い出して悲しくなる経験を、今までと違う視点でとらえられるように励まされました。ありがとうございました。

・みんないろんなつらさがある。いやし方もいろいろ。でもそれを分かち合うのはステキなことだと思いました。言葉で外に出せる人はだけでも少し救われる、楽になるように思います。でも、言葉でうまく出せない人、うまく出せない時は…?それを感じよう、知ろうとしてくれる人がまわりにいてくれるだけでも救われる気がします。そういう雰囲気を感じるアカデミアでした。

テーマ発案者と参加者、プログラム担当者の振り返り

・奏さん(テーマ発案者)
いい会、いいグループの時間でした。
感情が動きました。
参加者の方ご自身のお話を聴き、泣いてしまいました。
私の過去の体験と重なり、心のどこかで共鳴していたのかもしれません。
泣いても、もうあまり恥ずかしくありませんでした。
たぶん、周りが安心できる人だと、泣いているところを見られても恥ずかしくないんだと思います。
帰りがけに声を掛けてくれた参加者の方のすっきりとした表情が残ります。
その方は、今度私の絵が展示される山形の展示会を見に行きますとお話ししてくれました。
その方の笑顔が、晴れた日に旅する山形とぴったりでした。


・清水葉月さん(ゲスト)
今回のイベントタイトルを拝見した時、きっとこの場は様々な人のいやな体験とその向き合い方を受け入れていくような優しい場になるだろう、そんな私自身求めてきた場を一緒につくりたいと思いました。テーマ発案者の奏さん本人の言葉で綴られた丁寧なあいさつ文をじっくりと聞いた後、参加者のみなさんがこれまであまり人には話してこなかった体験と気持ちが引き出され、普段は見過ごされてしまうような繊細な本音を語り合う時間になりました。みんな体験は違うけれど、自らの想いと重ね、相手に言葉を贈ることも。
この場がみなさんにとってゆるやかな癒し方の一つになれば良いなと思いました。


・佐竹真紀子(プログラム担当者)
対話の約束事を説明しているとき、参加者から「同情と共感ってどうちがうんですか?」と質問がありました。発案者の奏さんと打ち合わせでも「話して共感してもらいたいわけじゃないかも。でも何で話していいかもと思うんだろう?」と自問も出ていました。世代や暮らし方が異なる人たちと言葉や経験を交わして、参加者それぞれにどう話すか/どう聞くかを丁寧に実践している様子から、なぜ自分のことを語るのか/相手のことを聞くのかという、根っこにある問いの存在も感じた時間になりました。上記の奏さんの振り返りにある「共鳴」というワードも、その問いにかかわるものだなと思います。
今回のテーマでもある「イヤな体験」は、人それぞれにあるし、比較的穏やかな時期が来たり渦中にあったりと、その人の中でも日々揺れ動くものだと思います。対話を通して、誰かに話すことが少しでも気軽になったらいいし、「ここまでなら人に話してもいいかな」と自分にとってちょうどいいラインが見つかったらなと思います。


レポート:佐竹真紀子(プロジェクトスタッフ、一般社団法人NOOK)

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