
終了・報告
報告レポート スウプノアカデミア2024「スポーツは気晴らし!?~つくって遊んでデポルターレ!」
- 開催日
- 2024年09月29日(日)
- 時間
- 15:00-17:00(14:45受付開始)
- 場所
- 太白区中央市民センター3階 第1小会議室
- 参加人数
- 合計25人
<参加者13人、付添者2人、ボランティア2人、スタッフ3人、見学3人、手話通訳2人>
- 概要
- スポーツの語源は、ラテン語「deportare」(デポルターレ)。気分転換・気晴らしという意味があります。オリンピック・パラリンピックのような競技スポーツだけでなく、自由に身体を動かしたり、遊んだりできるものです。誰もが参加し楽しめるスポーツを発明して遊びましょう!
[発案者]吉田広子さん
[プログラム担当者]菊地敏子さん、伊藤光栄(NPO法人エイブル・アート・ジャパン)
1. スポーツの本来の意味や本質は、気晴らしや遊び!
今回は、発案者・吉田広子さんが「パラリンピックに精神障害者は参加できない」と知ったことがきっかけでした。それから、「障害のあるなしにかかわらずスポーツ本来の意味や本質が気になり調べると、気晴らしや遊びだった」ことを知り、「もっと気軽に年齢や性別、障害の有無に関係なく、自由にからだや頭を使って参加を楽しめる新しいスポーツを考えたい」という思いから、今回のプログラムははじまりました。
はじめにその思いをお話しして、プログラムがスタートします。スポーツを楽しむという思いから、会場を三角旗で装飾して、楽しげな雰囲気をつくりました。
前半は誰もが参加して楽しめるスポーツをまなび、後半は自分でスポーツを作ってみるという内容で行いました。


2. 誰もが参加して楽しめるってどんなこと?
はじめに誰もが参加して楽しめるスポーツについてスライド資料から学びました。スライド資料では、スポーツの語源や誰でも参加して楽しめるスポーツの例を紹介しました。途中、みんなが持っているスポーツのイメージを聞くと、「オリンピック、パラリンピック、金メダル」「みんなで競技を楽しむ」「ボウリング」という意見が出ました。
次に、誰もが参加して楽しめるスポーツのひとつを体験しました。1mという幅で端と端にスタートとゴールを設定し、止まらずに動いて、どれだけ遅く渡れるかを競います。車イスユーザーも参加しました。参加者からは「楽しかった」「難しかった」とそれぞれの感想がありました。


3. つくって遊んでデポルターレ!
休憩を挟んで、次は2チームに分かれて誰もが参加して楽しめるスポーツを考えました。チームごとに各部屋に分かれて、話しあいます。
段ボールやテープ、ボールなどを実際に使いながら、アイデアを出しあいました。ボールを地面に向かって投げてみたり、段ボールやひもで的となるものを工作してみたり、いろいろなアイデアが出ます。ホワイトボードにアイデアを書きながら、どんなスポーツにするかを考えあいました。
なお、ボッチャのボールやソフトバレーボール、鈴の入った風船などは一般社団法人仙台市障害者スポーツ協会(※)から事前にお借りしました。
※一般社団法人仙台市障害者スポーツ協会-障害者スポーツ用具(貸出)
https://www.sendai-dsa.jp/reatal.html


4. 「バウンドさせるボールリレー」と「ふうせんラダーゲッター」
話しあいが終わったあと、お互いのチームでつくったスポーツを体験しあいました。
ここで生まれたスポーツを紹介します。
▼Aチーム
【使用する道具】
・ふうせんバレー用ふうせん
・ポスカ
【ルール】
・複数人で行う。
・風船を床にバウンドさせて、チーム内で投げあう。
・絶対に全員がふうせんを手にとる。
・最後にポスカをめがけて、ふうせんを投げる。
・倒れたポスカの点数が得点になる。

▼Bチーム
スポーツ名:ふうせんラダーゲッター
【使用する道具】
・ふうせんバレー用ふうせん2つをひもでつないだもの)
・ハンガーラック(ひもや、段ボールで引っかかる部分を工作したもの)
【ルール】
・個人でもできる。
・立ち位置は、基本的には的から1~2mのところだが、個人にあわせて距離を変更してもよい。
・ハンガーラックをめがけて、風船を投げる。
・ひっかかった場所の点数が得点になる。

5. 皆ができるって部分がいいなって思いました
最後に感想を共有しあって終了です。出た感想の一部を紹介します。
・即席でこんなこともできるんだということがわかって楽しかった。
・最初はボッチャを使う予定だったが、風船ボールを使うとどこに向かうかわからなくて、楽しいなと思った。
・いろんなスポーツをやってやめてきた。今もいろんなスポーツもしている。結構知っているので、いっぱい案を出せました。
・投げる距離を設定が自分でできるってことで、投げるのはあまり得意じゃないが、そういう人でもラダーに近寄ってできる、そういうのが皆ができるって部分がいいなって思いました。
・風船がどこにいくかわからないっていうのは面白かった。私は前に(中略)ふうせんバレーをやっていたが、思うように飛ばなくてやめちゃった。けど、時を経て、こういう楽しみに生まれ変わったから良かったなって思った。
スウプノレコード(参加者の感じたことや学んだこと)の一部
・たのしかったです。かぞくと、スポーツを作ってしたいです。
・一番速くとか、そういうことが金メダルになるって思ったけど、そういうわけじゃない。発想の転換が大事なんだなと思いました。自分はチーム競技でみんなで協力してやれるといいなと思った。
・どんな小さな経験も突然つながって楽しい想い出を作れることもある。だから、生きてること自体時間のムダとは思いたくない。
・みんなであるテーマについて話し合いながら決めるプロセスがとても良かったです。やり方しだいで様々な可能性が広がることができると思いました。
・簡単にできるということも大事なポイントである一方、ある程度のままならない難しさが面白い・楽しめる・工夫できるポイントになると感じました(風船の取り扱いなど)
・誰でも(はじめてでも)受け入れてくれる雰囲気づくりがすばらしく、参加された方々が本心を出せる時間になっていたと思います!
終了後の振り返り
・導入がすごくよかった。スポーツの根源からせまったので、フラットな感じで入れた。こんなにゆるくていいんだと思った。みんなの経験値をゆるく楽しめるよねという方向性で場が進められたのかなと思う。
・いろいろな人の視点や人の立場でスポーツを考えるということに意味があったり、学びとしての効果があったのかなと思った。Aさんは鈴が入った風船が目の見えない人でも楽しめるとか、いろんな人の立場にたって、みんなが楽しめるという視点で考えられたのが良かった。ゼロベースで考えようというのも良かった。なにかベースのあるものから考えると、今までの価値観や年齢、経験によって言えることや言えないこともでてくるが、小さい子からおじいさんおばあさんも言えそうだった。みんなで一緒になにかを考えることはいいことだなと思った。
テーマ設定者とプログラム担当者の振り返り
・吉田広子さん(発案者)
はじめは「パラリンピックに精神障害者は参加できない」と知り、それを変えたいと思っていたんですけど、「そもそもスポーツって何なの?」と少し考え方が変わって調べたら、「気晴らしや遊び」だと知りました。
それまで、スポーツは勝負が必須だと思っていただけに、本当は、すごくシンプルなことに驚きました。
そして、実際、誰でも参加できるスポーツを、みんあんでアイディアを出し合ったら、すごくゆるいけど、でも、何か楽しい。たぶん、それが、スポーツの本来持っている、楽しさのような気がしました。
何も、選手宣誓をして、スポーツマンシップにのっとり、正々堂々と戦わなくても、スポーツはできることに気付けた事がすごくよかったなと思いました。
・菊地敏子さん(プログラム担当者)
人によってアイデアの出し方が違うのが面白かった。道具を持っていって、こんなのありますよと行ったら、そこからアイデアを広げていった。参加者の一人が自分でジョイポリスとか体験したことを無数に出してくれた。みんなが自由に出して、出してもらった要素をつなげられそうですねと言いながらつなげていった。まいさんもホワイトボードにたくさん書いてくれた。そこからさらに派生してつながったのかなと思った。どれぐらい、みんなのまとめを進めていいのか手探りだったが、みんなが意見を出しあってできたので、次もやってみたいなと思った。
・伊藤光栄(プログラム担当者)
このプログラムの最初の打合せでは、吉田さんの「パラリンピックに精神障害者が出られない」という問題提起から、話しあいやスポーツ体験などいろいろな案もでて、モヤモヤしていました。2回目の打合せで、吉田さんがスポーツについて調べ、その中で「遊びや気晴らし」という意味を見つけて、これに気づいてもらえるようなプログラムにしようという話になりました。そこで、スウプノアカデミア運営チームからの助言も取り入れながら、自分たちで誰でも楽しめるスポーツをつくって遊ぶ、という内容になったというプロセスがありました。
そして、当日の会場では、参加者それぞれのアイデアや意見が混ざりあいながら2つのスポーツが出来上がりました。参加者には、自分たちの作ったスポーツをもっと他の場所でもやったらいいのに!と話している人もおり、感想からもそれぞれが満足感の高いプログラムになったのではないかと思います。
学びたい本人がプログラムの可能性を広げた回でした。改めて、本人が一緒にプログラムを考えるというプロセスの大切さを実感しました。
レポート:伊藤光栄(NPO法人エイブル・アート・ジャパン)