終了・報告

【報告レポート】第5回「てつがくカフェで考えてみよう!「自分らしさ」って?「普通」ってなに?」

開催日
2022年12月11日(日)
時間
14:00-16:00
場所
仙台フォーラス7階even 及び オンライン(Zoom)
参加人数
合計12人(参加者:4人、ボランティア1人、スタッフ7人(内オンライン1人))
概要
てつがくカフェは、気になる疑問を立ち止まってゆっくり考える広場のことです。
あなたの考える「自分らしさ」や「普通」って、どういうもの?自分の思いを言葉にしたり、集まった人たちの声を聞きながら、あらためて考えてみませんか?
[テーマ設定] mayumi
[プログラム担当者] 佐竹真紀子(美術作家/一般社団法人NOOK)

まなびを考える会からスタートし、5回のプログラム内容をメンバーとつくり上げる「スウプノアカデミア」。いよいよ今回でプログラムもラストとなりました。
今回のキーワードはズバリ“自分らしさ”。

プログラムができるまで

発起人のmayumiさんは、7月に開催したまなびを考える会で、「自分らしさ」を学びのテーマに取り上げていました。その後、プログラム開催までは約5ヵ月の期間があり、mayumiさんとは月に一回オンラインで打ち合わせを重ねながらゆっくりプログラムづくりをしました。

準備期間のおしゃべりで印象に残っているのは、mayumiさんが「自分らしさ」と「普通」を切り離さずに考えていたこと。
「“自分らしさ”と“普通”という言葉や考え方は、便利でもあるけど、違和感やモヤモヤを感じることもある。
ふとした会話の中で『〇〇が普通だよね?』と言われてつい頷いてしまったとき、“自分らしさ”はどこにいっちゃったんだろうと思った」
と話していた経緯で、“自分らしさ”と“普通”のどちらかを絞らずに、両方をプログラムのテーマにしました。
また、ゲストを呼ぶよりも身近な人たちで話し合ってみたいという思いから、対話の手法の一つである「てつがくカフェ」にチャレンジすることにしました。

てつがくカフェに参加してみよう!

「てつがくカフェ」とは、あるテーマをじっくり考えるための、対話の集いです。なかなか考える機会を持てていないけど気になるという事柄をテーマに選んで、集まった人たちでおしゃべりをし、さまざまな考えをもちよります。自分たちがいまどんなことを思っているのか、話しながら整理する場です。
参加者のほとんど全員がてつがくカフェ初参加。
ということで、最初にてつがくカフェの約束事を共有した後で、対話の時間に入りました。

言葉を紡ぐ時間をみんなで待つ

今回選んだ「自分らしさってなに?普通ってなに?」というテーマは、誰しもにきっかけがある一方で、抽象的で難しい内容でもあります。
参加してるみなさんには、日常生活や自らのエピソードも話に織り混ぜてもらい、経験に引きつけてイメージしながら対話をしました。
集まったメンバーの中には、言葉や対話以外のコミュニケーションの方が得意だったり、お話しの輪に加わることがちょっと苦手、という人もいます。てつがくカフェは聞くだけの参加もokなので、集まったメンバー全員が無理に発言しなくてもいいというスタンスで進めましたが、全員の声を拾うことができました。

「“普通”は、特別ではないこと、風変わりであること」
「なるほど。風変わりって言葉だと、“普通じゃない”って言葉よりもポジティブに聞いて受け取るかも」

「“自分らしさ”は、自転車でいろんなまちに行ってみたい。自動車学校に行ってみたい」
「〇〇さんにとっての“自分らしさ”は、今の状況いうよりも、希望や願望を含むものなんですね」
「自由な感じがする。聞いててとても心地いいなあと思いました」

自分の言葉で語ろうとする“間”を参加しているみんなで待ち、発せられる言葉に驚く、ある発言を他の人が汲み取り話題を広げていく……などといった場面も多かったです。
発言するだけでも十分すごいことなのだけれど、みなさんが他の人の声や考えに対して、細やかに耳を傾けていることが対話のやりとりの随所に含まれていました。

考え方によってはネガティブにもポジティブにも受け取れる、“自分らしさ”と“普通”。一人だけで考えずに複数人で考えると(みんなでモヤモヤすると)、苦しくなりすぎず、風通しのいいものに変わっていくようにも感じます。良し悪しではない俯瞰的な見方も生まれていて、
「“普通”は人それぞれにちがいのあるものだから、”自分の“普通”と”誰かの“普通”をあわせもって“普通”っていうものの幅がどんどん広がっていくといいよね」という話題が、障害にまつわる悩みも持ち合わせる当事者たちからに出たことが、すごく大切だったように思います。

スウプノレコード (参加者の受けてみて感じたことや、考えたこと)

・普通はステータス
・とても深くて質が高く、濃密な世界でした!たぶんこのさきもこのテーマについて喜怒哀楽があると思いますが、たくさんの新しい考え方が生まれました!
・”普通”も”自分らしさ”も自分にとって好きなこと、正しいと思うことから成り立っているのかなと考えました。
・とても楽しかったです。イベントが楽しかったです。
・普通と自分らしさ じぶんがあげたテーマで色々広まっていったのがよかった。悩んでいたが、少し救われた。またこの場のように話し合えたらいいなと思います。
・考えはまだまとまっていませんが、これからも考えて意見交流していきたいと思います。
・相手の話と自分の考えを通して、同じだったり、違かったり、ずらしたり、広げたり…熟議することの深さを感じることができました。
・はじめに「てつがくカフェ」に参加したことがない/はじめて参加する人たちが多いことに驚きました。そもそもこのような場/対話/(属性を排除して)語り合う場をつくることがもっともっと必要ということを冒頭から考えてしまいました。

テーマ設定者とプログラム担当者の振り返り

・mayumiさん(テーマ設定)
初めててつがくカフェをやりましたが、楽しくて面白かったです。
ゆっくり話し合える時間で、初めての経験でした。
話が広がって枝分かれしていって、結論がなかったのもよかったです。
想像してた答えと全然違っていて、板書に残ってることはどれも自分になかった価値観で、なるほどなと思いました。
「自分らしさとは?という問いに〇〇したい、〇〇してみたい」と答えていた人が印象的でした。
「普通なんてない」と意見を聞いたのも衝撃で、自分でそういうふうに考えてみたら元気が出ました。

・佐竹真紀子(プログラム担当/一般社団法人NOOK)
アカデミアで出会う人たちは普段から感情の機微に敏感な人が多いように思います。今回対話の場を開いてみて、発せられる言葉や、他の人の発言を聞いたときの反応の節々に、感受性のアンテナが繊細に張り巡らされていました。
「考える」「話す」「聞く」をシンプルに試みる機会だったため、普段サポートに回りがちだったスタッフも参加者と変わらず対話に加わり、障害の有無に関わらず一緒にまじって学んだ時間にもなったと思います。
スタッフ間での振り返りでは、櫻井さんから「“場に混じって一緒にいる“”という参加の仕方が、この場所でも他の場所でももっとあっていいよね。大事だって言っていきたいよね」というコメントもあり、もっと意識していきたいです。
あとは、今回あえて「てつがくカフェ」と称しておしゃべりしてみて、気軽に参加してもらうための工夫が要るなと感じました。障害にまつわる事柄に日々触れて考えている人たちと本当はもっと開いてみたい手法でありつつ、「てつがく」や「対話」と聞くとどうしても難しいイメージがある。「てつがくカフェ」が全国各地で開かれていますが、安全な対話をつくる性質上、記録公開されてないため、当事者たちが参加しやすくなる入り口があるといいかもしれません。チュートリアル動画とか。


レポート:佐竹真紀子

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