終了・報告

SOUPの研修2020報告:生き方はひとつじゃないぜ!/京都

開催日
2020年11月30日(月)
時間
10:30-12:30
場所
オンライン
案内役
木ノ戸昌幸さん(NPO法人スウィング代表)、あちゃみさん
参加者
10名および3事業所(放課後等デイサービス事業、就労継続支援B型事業所、生活介護事業所)
障害のある人と地域住民の接点をつくりたい、それを芸術文化を媒介につくりたいと考えている福祉施設、NPO中間支援組織、障害のある人、文化芸術関係者
宮城県からは仙台市、石巻市、登米市、県外からは東京
テーマ
福祉のイメージをかえる。利用者も職員も分け隔てなく、そのさまざまな働き方を社会に発信するNPOスウィング。戦隊ヒーローに扮して行う清掃活動「ゴミコロリ」、人権フェスタをきっかけにはじまった寸劇上演、アートを通じた仕事づくりや子どもたちとの交流、障害者が一切登場しないフリーペーパー発刊などなど。
でも、これはいたってまじめな市民活動。どうしたら福祉が地域にまざりあい、人々の関係を溶解していくのか。そのためにどのように芸術文化を活用しているのか。そのこだわりと遊びは、東北にちょっぴりあってもいい(かもしれない)視点です。

概要

はじめに「町家」といわれる拠点から、木ノ戸さんによりスウィングとはどのような理念や想いがある場なのか、スライドでの紹介があった。

写真:KAZUSHIさん作、コラージュの右のお顔が木ノ戸さん

2006年にNPO法人として京都・上賀茂に産声をあげたスウィング。
NPOとは、「市民」が自発的に社会をより良くするために活動する、営利を目的としない市民団体のこと。そのため、一人ひとりが主体となって活動すること、職員とか利用者という「分断をなくす」ために、日常的な情報共有(全員で共有する)、出られる人が電話に出る、引越しの手伝いもお互いさま、おごり・おごられる、車いすを押すのは?料理をふるまうのは?といった、関係のあり方にこだわっていることが報告された。
ここに関わる全員が、主体性をもつことを大切にし、それができる環境をつくっていこうという、この団体で大切にしている視点が語られた。

次に「スウィングの仕事」について。
なんでも「仕事」って言う、お金を稼げる人がえらいとか、そういう雰囲気がない、それぞれの「別にやらなくてもいいこと」が大切にされ、仕事して尊重されている。その事例として数人の活動が紹介されたが、「親の年金をつかってキャバクラ」という、(ある種、センセーショナルな)増田さんの活動や展覧会が紹介された。



写真:『FLOWERS展』プロモーションビデオのワンシーン(ひーちゃん主演)。
『FLOWERS展』では、「障害者×芸術活動=めちゃいい感じ」なのではなく「人間×芸術活動=めちゃいい感じ」なのだという思いを込めて、コロナ禍において200点以上の人間の作品を集めた。

スウィングの仕事のなかで、とくに注目される「ゴミコロリ」。
「圧倒的に良いことをおしつけがましさのない活動に変えること」として、「まち美化戦隊ゴミコロレンジャー」の活動が具体的に紹介された。はじめた当初は、子どもが逃げ惑う、パトカーが出動し職務質問をされることもあったが、今では子どもや中高生からも認知され、さらに支部が国内外に広がっているという。以後、ゴミコロレンジャーは、この衣装のまま、交番に行くことも、コンビニに行くことも、地下鉄に乗ることもできる。
木ノ戸さんは、「継続性が景色を変える。同一性が求められる世の中で、少し違うことをしている大人がいるということが、実は社会のなかでの安心感なのではないか」という。

このほか、箱折の仕事「紙器折々」、京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます」、児童館に行く、フリースクールの生徒とスポーツをするなどの「コドモトアソブ」、最年長のGさん(じーさん)と行う「Gうへうへ舞妓PROJECT」、スウィング図書館化計画なども紹介された。こうした活動は、日々、ブログ、フェイスブック、YouTube、フリーペーパー『Swinging』などから発信されている。
また、「普通、常識、固定観念、『べき』、『ねば』などを疑い、セーフゾーンのちょっと外側を狙い『ギリギリアウトを狙う』」という、活動の方法論が語られた。

その後、町家を出て木ノ戸さんが晴天のなか、スウィングの本部に移動する。
「天下一品ラーメン」の本部事務所の一角、元学習塾の校舎を15年、無償でお借りしているという。携帯電話をカメラにして、建物にはいり、一人ひとりの活動を紹介する。本部はおもに4つの教室があり、にぎやかに和気あいあいと描くことが好きな人のためのスペース、集中して制作したい人のスペース、紙折のスペース、事務職メンバーが常駐する図書館的スペースを、常時20-30人の人たちが利用している。1階では、絵を描いているひと、コラージュするひと、事務仕事をするひと、箱折をするひと、詩をかくひと、が順次紹介された。

また、メダカを飼っているという縁側や、週末に「氷川きよし特別公演」に行った人のカタログやグッズ(扇子やマスク)、本日のお弁当も紹介された(カロリーをコントロールする必要のある人には専用の弁当が準備されていた)。

2階に上ると、さらに一人ひとりと話し、制作中の作品も紹介してくれた。

写真:アート会長さんと、彼の描く漫画もオンライン中継で詳細にみられた

最後に眼がとまったのは、靴箱だ。
「アート会長」「ゴルゴ」「Q」など、利用する人の固有名詞が表示されている。最初に、「どう呼ばれたいか」を本人に確認し、その名前で呼ぶ、関係をつくる、徹底ぶりの一端が垣間見える。

宮城県の参加者からも熱心な感想や質問がとんだ。
「学習塾の場を無償で借りることになったきっかけ」はという問いに対し、木ノ戸さんから「自分たちの方向性をもってすすんでいると、人や場所も機会がめぐってくる、自然に集まってくるはずです」という応答があり、令和4年に就労継続支援B型事業所の開所を控えている参加者であったため「希望がもてました」と回答する様子もあった。

「笑いのなかにも理念があり、やさしさもあり、刺激的だった」という感想があった。また、就労継続支援B型事業所で表現活動を中心にしながら、定期的に入ってくる「軽作業」をひとつの仕事として定着することが難しいときに、いろいろな角度から捉えるスウィングの様子に、自分たちも「仕事」の捉え方についてあらためて検討してみます、という声もあった。

最後に、宮城県の小さな町で、表現活動をベースとして活動をはじめたNPOの代表者から、「批判があるときに、メンタルをどう保っているか」という問いがあり、「嫌われている、というよりは意見や考えが違う、と考えるようにしている。また、相手のことを知るということを、努力してやってきたつもりです」という回答もあった。(レポート:柴崎由美子)

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