終了・報告

《 SHIRO Atelier&Studio 》「アトリエつくるて」①オンライン試行事業[報告レポート]

時間
14:00~16:00
場所
オンラインzoom
開催日
2020年5月2日(土)-5月3日(日)



前年度から「アトリエつくるて」のファシリテーターをしています、佐竹です。このレポートでは、ZOOMを活用して開催した「アトリエつくるてオンライン」をファシリテーターの視点から振り返り、オンラインの活動で見えてきたことや、実施して感じた課題などを整理してみたいと思います。

大人もこどもも、障害のある人もない人も、誰でも参加できるアトリエつくるて。参加者さんにとってこのアトリエという場が、学校や職場などの普段過ごす場所の他の「ひとつの居場所」として細く長く続いていくといいな……と前年度の終わりに考えた矢先に、これまで基盤としていた日常自体が変化しました。

家で過ごしていても心落ち着かないような日々が続く中で、ひとつの場所に集まらずに繋がりを保つための方法として試行した「アトリエつくるてオンライン」。いつものアトリエでは、“つくる時間”と“作品を見る時間”をそれぞれ設け、3,4時間ほどをみんなで一緒に過ごしていますが、この枠組みはそのまま変えずに活動しました。ただし、ZOOMを使って画面越しに話を聞くことと、作品づくりの間には、切り替えや集中力が必要です。慣れない試みで疲れてしまうことも想定して、みなさんには二日間の開催期間のあいだで、それぞれのペースで参加してもらうよう呼びかけました。

“つくる時間”では、いつもどおり何を描いてもつくってもOK。ちなみに今回は、「音楽を聞いてイメージしたものを表現してみよう」とお題も設定してみました。あたらしいものに出会う機会の少なかった今春、誰かと一緒に同じものを聞く体験を大事にしたいと思い、新倉壮朗さんのマリンバ演奏とピアノ演奏をZOOMの画面共有で聞いたあとに、作品づくりをスタート。“つくる時間”のあいだは、ZOOMを切って集中モードに入る人、ZOOMを繋いだまま作業をする人、それぞれ自由にし、ZOOMに残ったメンバーとは、「今はどんなものを描いてるの?」「最近どう過ごしてました?」とおしゃべりも交えながら手を動かしました。

オンラインアトリエで見えてきたこと

今回のオンラインの集いが、参加者のみなさんとスタッフとでこれまで培われてきた関係性の上に成立していること、みなさんがそれぞれポジティブに捉えて参加してくれていたこと、まずはそれに尽きます。作品づくりに必要な画材を揃える、みんなに見せる作品を用意する、ZOOMの環境を整える……活動の随所に、つくることへの意欲や信頼、創作活動を通して誰かと繋がることへの信頼が垣間見えました。「コロナのことを考えるとこわくなるけれど、描いていると気持ちが楽になる」と参加者さんがコメントをくれましたが、家で長く過ごす時間をうまく活用して大作にチャレンジしたり、不安な気持ちを創作活動に昇華させていたりと、みなさんの中に根付く柔軟さを一層たくましく感じた二日間でした。

今回はお題を用いた作品づくりにチャレンジしていた参加者さんが多かったのも印象的でした。壮朗さんのマリンバやピアノの演奏から、雨や風、泡、山、宇宙のイメージがした、柔らかい音に自分が沈んでいくような感覚がした、洞穴の中で響いているような不思議な感じがした、などなど、壮朗さんの音楽から受け取ったもの、それぞれの受け取り方を、絵でおすそ分けし合っているようでした。

オンラインでの集いと、「場」での集い

今回はオンラインでのアトリエを試行しましたが、個人的には、参加者が集まって生まれる「場」を、オンラインでの集いが代替できるとは思っていません。もちろん活動の内容にもよりますが、とくに絵や立体をつくるアトリエ、それらの作品を見る時間においては、制作の傍らにいること、実際の作品に対面しての気づきが大きいです。お互いの集中力を察知しながら、相手に声をかけないけれども、少し遠くから眺めて見守り合っている時間。参加者同士で交わされる、その人たちだけの会話。同じ場所に集まって作品づくりをするときにはそうした、ちょっとした秘密のような部分や繊細なやりとりの隙間が生まれます。こと作品を見る時間では、場の雰囲気を探りつつ、みなさんの声をゆっくり拾いたいなと活動しているのですが、今回はファシリテーターと作者との1対1になってしまったり、ファシリテーターで回収してしまいがちだったかなと少し反省しています。また、オンラインで繋がる時のプライベートへの配慮(部屋が映り生活の場が見えてしまいすぎること)も、慎重すぎるぐらいがちょうど良いかもしれないと感じました。

とはいえ、開催できてよかった点は多くあります。先でプライベートの課題に触れましたが、今回は“作品を見る時間”のときに、普段自宅で制作している作品を見せてくれた参加者さんもいました。大きな作品や、時間をかけた作品、短時間集まるアトリエでは見ることができない作品の紹介によって、個人の中の表現の多様さを少し覗かせてもらえるような時間が生まれ、それを見た参加者さんたちにも、いつもとはまた違った刺激や影響があったようです。

そして何よりも、初日のあいさつの時間でみんなで集合できたときの安心感や嬉しさを思い出すと、今回のオンラインの集いは、みんなで再集合するのためのメディアとして機能したのではないかなと感じました。感想アンケートでの「マスクなしで人と会えた」というコメントが象徴しているように、少人数であっても同じ場所で人々が集うことができない期間が長期に渡る場合に、オンラインなどの別の方法を持ち合わせておくこと、その手段に慣れておくことで、打開できることもありそうです。もしかしたら参加者のみなさんにとっても、自分がアトリエの場が好きなのか、それとも、オンラインの集いなどの別の方法が向いていたり楽だったりするのか、試してみる機会になったのではないでしょうか。「場」で集まることも含めて、これから複数の選択肢を選べるようになっていくことを願いながら、また次の形を探していきたいと思います。

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