終了・報告

展示のひらき方に関する研修・「魅せる力の1・2・3!」報告

開催日
2019年12月12日(木)
時間
14:00~17:00
場所
宮城県美術館(宮城県仙台市青葉区川内元支倉34−1)

障害者芸術活動支援センター@宮城 研修報告

12月12日に、研修「魅せる力の1・2・3!」が行われました。この研修は、障害のある作家の作品展示の際に、その魅力をしっかりと伝えられる力を身につける、という目的で行われました。



参加者は障害者福祉施設で美術活動に関わる職員の方が多く、仙台のほかに隣県の山形や福島からも参加がありました。講師には日常的に作品展示に携わっている、宮城県美術館の松崎なつひさん、ギャラリーターンアラウンドの関本欣哉さんをお招きしました。
研修は、「常設展示を見学する」「展示の組み立て方を考える」「実際の展示方法を体験してみる」という3つのプログラムで構成されました。当日の順番に沿って内容をご紹介します。



最初のプログラムでは、松崎さんの案内で、宮城県美術館の常設展を見学しました。研修は、「気づいたことをなんでも言ってみてください」という松崎さんの問いかけから、参加者の方は様々な気付きを話し、松崎さんがその内容を詳しく解説するという形で進められました。



例えば、参加者の「作品の高さがそろっている」という気付きに対しては、「基本的にはお客さんの目線の高さに作品をそろえています。人の背の高さが様々ですが、宮城県美術館では、作品の中央を145cmの高さにして展示するのが基本です」というお話がありました。その他にも、「導線が工夫されている」「サイズでエリア分けされている」「額縁が作品によって違う」など、参加者からは様々な気付きがあり、松崎さんが一つ一つ解説する内容をみんなで聞くことで、学びを深めました。



2つめのプログラムでは、4つのグループに分かれて「シチュエーションに沿った作品展示の組み立てを考える」という課題にチャレンジしました。
今回用意されたシチュエーションは、「カフェ」「病院」「待合室」「レストラン」の4つでした。場所の写真を渡された参加者は、それぞれどんな人が来るのか、どんな状態で作品を観るのかを考えながら、展示する作品を選び、配置のシミュレーションを行いました。シミュレーションに使用する作品は、障害のある作家の手がけたもので、ポストカードになっているものを使用しました。



参加者はそれぞれのグループで話し合い、次第に打ち解けながら配置を考えていきました。発表で考え方をシェアする時間では、「素敵な作品なので、回廊になるべく多く展示したい」という考え方で進めるグループや、「座ってゆっくり観賞できるように、低めに配置して立体作品も床に置きたい」というグループなど、それぞれのシチュエーションに合わせて特徴的な展示を考えていました。
発表後、松崎さんからは、「カフェや福祉施設など、美術観賞だけが目的ではない場所で絵を飾る機会も多いと思います。そういった場所で展示をする時には、額装で保護をする、倒れないような工夫をするなど、作品保護の視点も大事になります」というお話がありました。

3つめのプログラムでは、関本さんを中心に、実際の展示に必要な技術について学びました。このプログラムでは、額装のマットを切る体験をするコースと、参加者が持ち寄った作品を関本さんがその場で展示実践するコースに分かれ、参加者は交代しながら手を動かしていました。



マットとは、額装の際に作品の上から重ねる厚紙のことで、作品が見やすいよう断面が斜めになっており、専用の道具で自分で切ることができます。今回は、宮城県在住の作家、浅野春香さん、佐々木英明さん、清水敬太さんの作品を印刷したものをお借りして、その作品に合ったマットを切ることに挑戦しました。額のサイズ、作品のサイズを考慮しながら、斜めの切れ込みを上手に入れるのはとても難しい作業でしたが、粘り強く取り組んで成功させた方もいました。



持ち寄り作品の展示実践では、関本さんから、展示の際に用意する基本的な道具や、画鋲やマグネットを使って作品に傷を付けずに展示する方法、ファイルを壁面に固定する方法などを、その場で実践を混えながら教えていただきました。参加者からは「幅がとても長い作品はどうやって展示したらいいですか」という質問が投げかけられ、吊るす、床に置くなど、様々なアイディアを一緒に考えていました。

参加者のアンケートでは、「『難しそう、大変そう』が『やれそう』に変わったことは大きな収穫でした」という声や、「学芸員さんがどのような視点で展示されているのか学ぶことができました」「限られた予算や材料でも、もっと色々な展示ができそうです」といった感想がありました。それぞれの現場に持ち帰って生かせるような研修になったのではないかと思います。

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