終了・報告

報告レポート スウプノアカデミア2025 8月プログラム 『しりたい・まなびたいにこたえる図書館ツアー』

開催日時
① プレツアー&意見交換:8月2日(土)午前10時~12時
② 本番ツアー:8月31日(日)午前10時~12時
場所
仙台市民図書館(せんだいメディアテーク2階~4階、B2階)
参加人数
① 合計13人(障害のある人4人、付添1人含)
② 合計27人(障害のある人8人、付添2人、ボランティア6人、手話通訳2人含)
概要
図書館ってどんなところ?
障害のある人とともに読書バリアフリー体験や館内見学などを行います。
読書には、紙に印刷された文字を読むだけではない、いろいろな楽しみ方があります。
さわる絵本や布絵本、大きな文字で読む大活字本、やさしいことばで読むLLブック、活字による読書が難しい人向けのデイジー図書(録音図書)などです。インターネットを通じて24時間いつでもどこでも電子書籍を借りて読むことができるサービス「せんだい電子図書館」も体験してみましょう!

1.このプログラムができるまで

このプログラムは、6月に2回行われた「まなびを考える会」で、参加者のなかから「図書館で勉強する、調べ物をする」「みんなで読書会」「フェイク情報の見分け方」など、図書館や読書、情報取得に関するキーワードが出てきたことをきっかけに生まれました。
2025年度のコンソーシアム委員に「仙台市図書館」が加わったこともタイムリー! 7月1日の第1回コンソーシアムの会議で相談し、仙台市内の各図書館で読書バリアフリーに関連する事業を展開していく予定であることもわかり、協働での実施に至りました。
今回は、特定の「発案者」を設定せずに、すでに図書館利用を活発にしている障害のある人と仙台市図書館職員と①「プレツアー&意見交換」を実施。ここで生まれた意見をベースにして、仙台市政だより等で公募した参加者とともに、②本番のツアーを実施することとしました。

2.①プレツアー&意見交換「知らなかった!図書館のあれこれ」の様子

仙台市民図書館には、すでに視覚障害や聴覚障害の人たちのためのサービスやツアーがあるため、それ以外の障害種の人たちに声をかけました。まなびを考える会で意見を出してくれた2人のほか、図書館を日常的に利用している福祉施設の関係者、20年以上図書館を毎週のように利用している人などです。障害種は、精神障害、高次脳機能障害、知的障害でした。
最初の1時間は、リラックスして自由に普段の図書館利用の様子を共有しました。「象の絵を描くときに、児童書をかりています」「雑誌を眺めるのが好き」「戦隊モノをかりている」といった発言とともに、「本当は児童図書のコーナーでもっと本を読みたいのだけれど」「やさしいことばで読むLLブックの存在は知らなかった」「パソコンから検索して、ここにない本を取り寄せられるなんて知らなかった」などの意見が出てきました。

みんなの身体と心があたたまった後、仙台市図書館の職員(市民図書館3、太白図書館1)、せんだいメディアテークの職員と、会議室に集まって、1時間ほど意見交換を実施しました。
障害のある人、付添者のアンケートと意見交換の結果は以下のようになりました。

【属性】
年代:40代1 50代2 60代1 無回答1 
生活の中での困りごと・苦手なこと:見えにくい、難しい文が読めない・集中できない、小さい文字が読みづらい

図書館利用の経験:あり5 なし0
バリアフリー図書の存在を知っていますか:知っている1 知らない4 
せんだい電子図書館の存在を知っていますか:知らない5

【図書館ツアーに向けた意見等】
もっと、いろいろ探したい/本の場所がわかりにくい、皆が普通(健常者)と思わないでほしい/館内で話をしてもよいものか/貸出期間内に読めない/りんごの棚の文字の大きな本のことを知りたい/静かで落ち着いていて居心地がいい/みんなのためにツアーの案内がわかりやすいといい/他の図書館の本を取り寄せられることを知らなかった/こども以外も児童書コーナーが利用できると知ってほしい/電子図書館に好印象

仙台市民図書館からも、ツアーのタイムテーブル案が示されました。みんなにとってわかりやすい集合場所の確認、荷物の預かり場所、移動ルート(車椅子ユーザー向けの移動ルート、大型エレベータを怖がる人のための移動ルートなど)、だれも知らなかった「せんだい電子図書館」の存在が分かるように説明すること、などを確認しました。

3.当日に向けた準備〜ボランティア希望者がたくさん!

8月1日に発行された「仙台市政だより」をみて、ツアーに関心ある方からの申し込みも複数ありました。中には、手話通訳を必要とする人がいたため手話通訳の手配をしました。また、ボランティアの申し込みが8人もあり、支援学級の教員、社会教育施設の職員(社会教育主事)、支援学校教職課程の学生、市民センター職員などもいました。ツアーの規模の条件下で6人までにさせていただきました。
ツアーを担当する仙台市民図書館は、夏休み期間を挟む繁忙期ではありましたが、「やさしい言い回しバージョン」原稿を作成するなど準備が進められました。

4.当日の様子〜②本番ツアー「しりたい・まなびたいにこたえる図書館ツアー」

⭕️集合場所
誰もがわかるように、せんだいメディアテーク1階の総合受付、目印は赤いテーブル前としました。一般のお客様とツアーメンバーが識別できるように名札を下げて、出発!
図書館長も、ツアーの噂を聞きつけた社会教育関係者も数人集まって、予想を超える大人数になっていました・・・。

⭕️1階 ブックポスト
メディアテークの西側入り口にある大きな銀色の曲面の立体物が、なんとブックポストであることに驚きの声が!私たちが24時間、いつでも本を返却することができることや、毎日、たくさんの本をここから回収・整理していることもわかりました。

⭕️2階 バリアフリー資料
2階の会議室に荷物を置いて、バリアフリー資料の案内を聞きました。活字による読書が難しい人向けのデイジー図書(録音図書)について紹介がありましたが、知っている人はわずか1人。全国のネットワークで利用できる「サピエ図書館」の仕組みにも「へ〜っ」という雰囲気です。

⭕️2階 りんごの棚
スウェーデンから世界に広がっている、読めない・読みにくい人がストレスなく読書を楽しめる本を集めた棚「りんごの棚」が紹介されました。大きな活字で印刷された本、点字で読むための本、わかりやすい文章やイラストで書かれた本が並んでいました。ここも知っていたのは、社会教育主事のボランティア2人だけ。障害のある利用者側には、まだまだサービスの利活用が進んでいないことがわかりました。
実際に手に取り、触って、読んで体験。「わかりやすいね」「見やすいね」といった参加者たちの声が聞こえてきました。ツアーメンバーからは、「棚はどこからどこまでですか」「大人も借りられるのですか」「本の見分け方はどのようにしたいいですか」などの活発な質問があり、図書館職員から「りんごのシールが貼ってありますよ」などの回答もありました。

⭕️3階 作業室
働く人しか入れない作業室を特別にご案内!新しく買った本に汚れを防ぐシートを貼ったり、パソコンに本の情報を入力したり、たくさんの人が働いていました。また仙台市内に7カ所ある図書館の本は、どこからでも借りられて、どこへでも返せるそうです。
真剣な顔で本の整理をしている人がいて、本が仙台市内で行き来している舞台裏を見ることができました。

⭕️3階 図書館の本棚
ここでは「本の探し方」のコツを紹介。本の背中に貼っている小さいシールには、歴史の本は2、料理の本は5というように数字が書かれていて、本が「分類」されていることの説明がありました。
さらに、パソコンで調べることもできて、パソコンが使えない時は図書館の人に相談して一緒に探してもらうことができることを知りました。
「貸出期間はどれくらいですか」との質問に、「2週間ですが、読みきれない時は、次の予約がなければもう一度借りられるんですよ」といったやりとりもありました。

⭕️4階 図書館の本棚(調べものに役立つ本とサービスについて)
3階の奥の方、中二階のような場所に移動しました。「ここは入ったことがないや」「なんだか静かにしないといけないような雰囲気だね」といった声が上がりました。
ここにある本には全て赤いシールが貼られており、郷土資料などが多く、借りることができない大切な本であることが説明されました。たくさん机もあって、本や資料とにらめっこしている利用者がいました。ツアーメンバーも少し声をひそめてお話ししていたように思います。

⭕️地階 閉架書庫(本・新聞・雑誌を保存するための倉庫)
ここもツアーで体験できる、とっておきの場所。本にカビが生えないように、湿度と温度が調整されているそうです。「せんだいメディアテークにある本だけで50万冊もあるのですよ」「河北新報は昭和37年から保存しています」といった説明とともに、この図書館にある一番古い本『はなひ草』を見せてくれました。「メディアテークの館長になったロバート・キャンベルさんはその本を見ましたか」といったユニークな質問も飛び出しました。また、カウンターで申し込みのあった本を、本専用の小型のエレベータで2階や3階に運ぶ様子も見せてくれました。

⭕️2階 会議室にて「せんだい電子図書館」体験
プレツアーの時に誰も知らなかったインターネット上にある電子図書館の紹介です。障害がある人の中には、移動が困難、外出がストレス、人との会話が苦手、といった様々な困難がある人もいます。
インターネット上に繋がるパソコン、タブレット、スマートフォンがあれば読むことができることが紹介され、また一部、読み上げ機能がついた図書も紹介されました。2週間の貸出期間を過ぎると自動的に返却されることが紹介されると「それは便利〜」という声も。ツアーメンバーからの「DVDやマンガもあるか?」、「スクリーンショットはできるか?」などのリアルで活発な質問もあり、図書館職員からは「残念ながらDVDや漫画はありません」「スクリーンショットはしてはいけません」といった回答がありました。

⭕️2階 会議室にてさまざまな質疑応答
最後に、参加者はスウプノレコードを記入し、可能な人は発表しました。特記として、「2階のトイレの横にある静養室は誰がどのような場合に使えるのか」、と障害のある人から質問がありました。「必要な時に図書館職員に申し出れば、使うことができます」と回答がありました。
たっぷりと2時間かけて、「しりたい・まなびたいにこたえる図書館ツアー」が終了しました。

5.まとめ

⭕️スウプノレコードより一部、記載(参加者・ボランティアの感じたことや学んだこと)
「なかなか行けない地下2階に行くことができて楽しかったです。点字の本をりんごの棚で読んでみたい。」
「本をおくるときにローラーがうごくのがよかったです」
「明治の本、難しい本かっこよかった。昔の人のイメージわいた」
「司書さんの説明が大変わかりやすくて良かったです」
「参加者の方も図書館のサービスや貸出している資料について知る機会となり、熱心に説明を聞いている姿が印象的でした。字を読むのが苦手でも写真や音声などで学ぶことができるのだと実感することができました。誰にでも学びの機会が提供できるようにするにはどうすれば良いのか、引き続き考えていきたいと思います」

⭕️運営側のふりかえりでの意見等(一部)
・情報保障(手話)が付いたのが良かった
・全体の注意事項を禁止行為ではなく、やわらかい表現で、かつ図や絵で示せると良さそう
・通常の利用を体験できると良い
・行程の図(館内図)があると良かった
・情報量が多く疲れを感じる。初級・中級・上級と分けてはどうか
・支援者向けのツアーがあっても良い

⭕️プログラム担当者より
[プログラム担当者]
・鵜殿(うどの) (仙台市民図書館)
参加者の皆さまが興味深く私たちの解説を聞いてくださったばかりか、熱心に質問もしていただき、私たちもよい刺激を受けました。障害をお持ちの方であっても図書館に来ると色々知ることが出来る、と分かる良いきっかけになるイベントだったと思います。
図書館では「りんごの棚」を始め、バリアフリー資料をそろえており、その他資料の郵送貸出サービスも行っていますので、今後もぜひ図書館をご利用ください。ありがとうございました。

・我妻(あがつま)(仙台市民図書館)
図書館について知りたい!という熱い思いから生まれた企画と伺い、専門用語を使わない図書館ツアーのメニューを新しく考えました。今回は電子図書館やデイジー図書など本を読む方法が一つではないということをお伝えしました。
このツアーを通して図書館は「ちょっと知っている場所」に変わったはず!
図書館をどんどん活用して、自分に合う読書スタイルを見つけてくださいね。

・柴崎(NPO法人エイブル・アート・ジャパン)
ツアーの後、図書館についての興味がわきました。「図書館は、基本的人権の一つとして知る自由を持つ国民に、資料と施設を提供することを、最も重要な任務とする」という言葉ではじまる「図書館の自由に関する宣言」(社団法人日本図書館協会、1954年)があることを知りました。偶然にも、障害のある方たちとの対話から生まれ、名付けられたツアーですが、より個別で丁寧な図書館の活用に向けて、図書館の皆さんとまた協働したいなと思いました。


レポート:柴崎由美子(NPO法人エイブル・アート・ジャパン)

バナー:障害者芸術文化活動普及支援事業(厚生労働省)
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