終了・報告

報告 第5回研修「自治体と協働型評価を通じて活動を振り返ろう!」

開催日
2026年03月03日(火)
時間
10:00〜12:00
場所
オンライン
概要
本研修は、広域センターが企画運営する「ブロック研修」です。南東北・北関東6県の障害者芸術文化活動支援センター(以下、支援センター)を運営する団体や行政の担当者が、年2回オンライン上で集まります。協働評価型の手法で実施する振り返りの回は、2026年3月3日に開催されました。25年7月に設定した各支援センターの目標・活動・評価指標を振り返り、その達成状況を確認し、今後の改善点を確認しあいました。

講師:宮田智史さん(NPO法人ドネルモ)
進行:柴崎由美子  運営サポート:伊藤光栄・高橋梨佳(以上、広域センター)
出席者
宮城・南東北・北関東6県の障害者芸術文化活動支援センター、宮城県障害福祉課、山形県、福島県障がい福祉課、栃木県障害福祉課、群馬県障害政策課、合計16名

主な内容

● 評価手法と意義の共有:講師より、さまざまな評価手法のうち「協働型評価」の手法と意義を説明
● 協働型評価の実践: 各支援センターが7月に設定した評価シート(目的・活動・評価指標)を振り返りながら、「ステップ4=評価結果」を記入することを基に、50分間のブレイクアウトセッションを実施
● 成果報告: 最集合し、各県の支援センター及び自治体職員が評価結果を報告
● 課題共有: 講師よりコメントを実施、時間の許す範囲で他の支援センターなどからコメント
● 運営サポート: 広域センターは、会議の設定、画面共有、ブレイクアウトルームの運用、視覚障害のある参加者への記録サポートなどを実施

各県の振り返り(ハイライト)

■ 栃木県:著作権研修の実施と新規参加者の開拓

【実施内容と成果】
● 研修形式: 基礎編(栃木県)と応用編(群馬県)に分けた著作権研修を実施。オンライン受講可能とした。企画・運営協力に広域センター。
● 参加実績: 基礎編は、県内外合わせて33人。栃木県は22人で初参加者18人(約8割)
● 新たな参加層: デザイン事務所など、これまでと異なる属性の参加者を獲得
● 効果的な広報: 栃木県と支援センターのメーリングリストが最も効果的な周知手段だったことが判明

【課題と改善方針】
● 古参参加者の減少: 「分かったつもり」になっている可能性があり、ヒアリングが必要
● 今後の方向性: 基礎編を広く宣伝し、新規参加者を増やすことに重点を置く
● ウェブ・SNSからの情報取得: 自ら情報を取りに来る人々が少ないため、広報を再検討
● 開催頻度の検討: 毎年開催か隔年開催か、数年かけて効果を検証
● 個別相談の検討: 研修後に個別相談の機会を設けることも検討

【講師からの助言】
新規参加者やこれまでとは異なる属性の参加者の獲得につながっており、都道府県と支援センターが連携した広報活動は効果的に機能している。今後は、基礎編・応用編それぞれの内容や開催頻度、対象者の設定について、単年度で結論を出すのではなく、実施状況や参加者の反応を踏まえながら、数年単位で段階的に見直し・改善を重ね、最適な運営方針を検討していくことが重要である。

■ 宮城県:文化芸術活動の空白地域へのアプローチと広域展開

【実施内容と成果】
宮城県では政令市の仙台都市圏に活動が集中する傾向があり、芸術文化活動がまだ活性化していない2圏域へのアプローチについて、その目標を「研修参加に各圏域毎に1事業所」とし、その後の活動をヒアリングするとしたが、振り返りの結果、研修参加者の中に空白地域2圏域の職員は参加していなかったことが報告された。

【課題と改善方針】
自治体担当者とともに課題を分析する過程で議論されたこととして、フォーカスを絞った個別のコネクション作りの必要性や、この圏域の職員が参加しやすい環境での開催が挙げられた。また、日頃から、宮城県が主催する既存の各種会議に支援センター職員が参加するなどの関係作りの重要性を確認したことを報告した。

【講師からの助言】
令和7年度に厚生労働省が実施した調査によると、障害者福祉施設において文化芸術活動を実施していると回答した施設は3割程度にとどまっている。一方で、「生活文化」など広い視点で捉えると、実際には多様な活動が行われているにもかかわらず、芸術文化に対する「高尚なもの」というイメージが依然として根強く残っていることがうかがえる。こうした状況を踏まえ、「生活文化」や「生涯学習」といった親しみやすい言葉を用いるなどの工夫により、文化芸術をより身近で参加しやすいものとして捉え直していく視点の重要性が指摘された。

■ 福島県:障害のある人々が文化施設やプログラムに参加できる

【実施内容と成果】
● 支援センターと県担当課との情報交換・ネットワーク会議の機会をつくるとして、前期・後期各1回を設定したが、後期1回の打ち合わせにとどまった。
● 担当課以外(例えば文化課や教育局など)との情報交換・ネットワーク会議の機会をつくることを目的としたが、実施できなかった。
● 支援センターは猪苗代町にあるが、その場所から出張し、まちなか美術館の企画とオープンミーティングを行うこととした。結果、障がいのある人や関係者約200名が参加。会場を開かれた場所に設定したこと、多様な人が気に留めてくれたこと、アーティスト派遣事業を公募型にしたことの紹介、事業所同士のネットワーク化が実現したことなどが成果。今後、いろんな地域でやるという案も検討中。

【課題と改善方針】
● 前期に打ち合わせを行わなかったため、事業のスタートが後手にまわってしまい、会議の計画に影響が出た。早期の計画・周知・連携体制の強化を来年度以降に実施する。
● オープンミーティングは、会議を経て連携することで、須賀川市などの行政・団体などともっと連携できることがあったのではないか。
● オープンミーティングのアンケートは3件だけだったが、イベントの満足度は高かった。
● まちなか美術館、レンタル事業の動きも増やしたい。今回、オープンミーティングと同じ地域でできたのはよかった。
● 特典配布など、行ってみようと思うきっかけづくりがあると、より来場者が増えそう。今回は、来場者数をカウントできていないが、特典配布により来場者を把握したりアンケートを回収したりする仕組みになりそう。
● 障害者計画にも文化計画にも障害者の芸術活動が位置づけられているが、支援センターがなにをしているかはあまり知られていないのではないかと感じている。これを受け、自治体担当者からは、来年度以降、県庁内の他の部署との連携を強化し、支援センターの活動を知ってもらうための機会を増やすことが発言された。

【講師からの助言】
これまで実施できていなかった、障がいのある人や関係者が参加できる会議を「オープンミーティング」として実現し、延べ約200名の参加者を確保できた点は大きな成果であり、高く評価できる。あわせて、今後の展開方法や課題についても適切に分析できている点が評価された。

■ 山形県:アクセシビリティ研修の実施(継続)

【実施内容と成果】
● 研修形式: 令和6年度に引き続き、山形県内のミュージアム及び劇場音楽堂等関係者を対象に「アクセシビリティ研修会」を実施した。企画・運営協力に広域センター。令和7年度は、国立アートリサーチセンターの研修を活用し、①eラーニング事前研修、②対面研修の2段構えとなった。
● 参加実績: ①eラーニングなど事前課題のある研修参加者15名、②対面研修の参加者26名。美術館・博物館の学芸員、劇場職員、生涯学習施設、行政職員(県福祉課、文化課等)、大学教員。
● 成果: 各研修で回収したアンケートは、いずれも満足度95%以上。「合理的配慮について理解が深まった」「具体的に自分たちが何ができるのか意見交換しながら考えることができた」「当事者から直接話を聞けて参考になった」など。参加者は研修会の成果として、参加者が実践に取り組む意欲を示し、学び合いのワーキンググループの設立が提案された。
● 研修の後、具体的な相談2件が生まれることを指標にしたが、それが達成した(美術館からの相談1件、県生涯学習課からの相談1件)

【課題と改善方針】
● 参加を想定している関係者とともに事前にオンラインで情報交換を行う予定だったが実施に至らなかった。
● 学び合いのワーキンググループの設立・運営を進め、県内各地域での実践事例拡大・情報共有を目指す。

【講師からの助言】
評価指標および評価結果について、定量・定性の両面から分かりやすく整理・説明されており、達成できたことと課題、今後の展開が非常に明確に示されている点が高く評価できる。

■ 茨城県:パラアーティストの表現を認知してもらうための発表機会の創出

【実施内容と成果】
新たに設置された「パラアーティストの表現を認知させるためのプロジェクト」の実施について報告。実施内容には①パラアーティストを発掘するワークショップ、②ナイスハート展(継続)、めぐる展(新規)4会場、オンライン展(新規)開催、③企業連携による商品化。

①WS参加者 69名(3回実施) 満足度93% ※準備室の繋がりも多いが、新規も半数ほど
「技法等の新鮮さ」、「人との関わり」が楽しめたという意見が多かった。WS後に表現を持ち寄る時間を実施→来年度以降内容/タイミング等を要検討

②展覧会入場者数 約1800人
4会場に巡回し、県内大学、アート関係者との繋がりが深まった。作家の日頃の活動、生活への質問も多く、展示作品だけではなく/ストーリーのみせ方、立体的に組み立てる(企業連携にも繋げる)。会場で相談事業も行なったが、オープンな場なのでやり方を変える。
茨城県職員と事業担当者の間での打合せは行えたが、情報交換会を実施するには至らず。

③企業4名、全体14名の参加
プロトタイプ作成中が指標通りの2企業。告知物を送る形での情報発信は実施できたが、レスポンスに至ったのは個別アクセスした企業のみだった。

【課題と改善方針】
● 情報共有の不足やスケジュールの過密さなどの課題が指摘された。
● 回数の多さではなく、効果が高いものに活動を絞りたいという意見あり。
● 参加者との情報交換の時間をきちんと取れる仕組みづくり。展覧会の設営等を研修として機能させるなど。
● 展覧会では、動画などをつかい、作者とその関係者との関わり(環境や支援者をフォーカスする)も含めて伝える構造に。
● 関係者が、しっかり対話・相談するタイミングや時間を確保し、長期的な視点での計画があるとやりやすい。

【講師からの助言】
都道府県が目標に掲げている企業連携については、単年度で成果を上げることは難しい。そこで、今年度は関係構築が進んだ企業や収集した情報を基に、現在進めている取組をビジネス構築に向けたフィージビリティスタディ(実現可能性調査)と位置づけ、企業側から得られたフィードバックを整理しつつ、行政担当者と今後の方向性について丁寧に協議していく必要性が指摘された。また、3年間にわたる準備室メンバーの取組が、県直営の支援センター業務へと接続した点の意義についても言及があった。これらを踏まえ、来年度に向けては、より柔軟なアプローチを取り入れながら、段階的に事業を展開していくことの重要性が示された。

■ 群馬県:文化振興セクターと障害政策セクターの融合

【実施内容と成果】
群馬県では文化振興セクターと障害政策セクターの融合をテーマに、公立美術館でのアクセシビリティ研修が開催され、約40名の参加者が参加した。来年度には、別の県立美術館での研修が決定し、現場レベルでの連携強化が計画されている。

● 企画は支援センターが行い、実際の運営には地域のNPOや視覚障害者支援の専門家(元支援学校校長、現研究者)が加わり、特に視覚障害のある人、車椅子ユーザーが参加する実地型の研修会となった。
● 公立美術館、行政担当者、県議市議等、これまでの研修会では参加されなかった人が参加した。

【課題と改善方針】
来年度から支援センターの運営組織が新たになるのを機に、文化振興課と連携する。特に、公立美術館や文化政策課等との連携強化のため、意見交換の場設営や新たな参加者層の開拓を継続する。

【講師からの助言】
今年度は公立美術館との連携が実現しており、さらに来年度も別の美術館との研修会が予定されるなど、文化分野における現場同士の連携が着実に進んでいる点は大きな成果である。

特記:運営のコツ

本研修は、同様の形式を3年間、講師の宮田さんと実施してきた。
留意した運営のコツは以下の通り。

・国が示したロジックモデルのフォーマットを活用(2年目〜)
ステップ1:事業計画を作ろう
ステップ2:活動評価計画をつくり、成果の達成を測る指標を設定しよう
ステップ3:事業計画と評価計画に沿って実際に取り組んでみよう
ステップ4:評価結果をもとに事業を振り返ろう

・支援センター担当者と設置窓口となる自治体担当者がペアで参加することを推奨し、ステップ1は年度当初(6〜7月)、ステップ4は年度末(2〜3月)に実施。

・オンラインでの会議の最大時間を2時間と設定し、事前にGoogleスライドの指定様式にデータなどを記入できるようにした(最初は当日説明し記入したが時間がかかってしまったため、2年目〜)

・ロジックモデルの逆算型の思考&実施を体得できるように、同じ手法を繰り返した

・参加者が、アンケート結果や活動の定量・定性的データを整理し、発表・ディスカッションに備えるようにした

・各地域担当者が、自地域の活動報告・評価結果(良かったこと・改善点)を自分の言葉で記録し、他地域と情報共有する

・各地域の活動・声・変化について、アンケート調査だけでなく生の声や具体的なエピソードも収集・共有することも重視している

・3年間の評価に関する研修を通じ、本ブロック全体について、講師より「ロジックモデルの活用・習得」と「障害者芸術文化活動支援センターとしての活動推進」の双方が着実に達成されている点が高く評価された。

作成したロジックモデルの図の一例

文責:柴崎由美子(南東北・北関東広域センター/NPO法人エイブル・アート・ジャパン)

バナー:障害者芸術文化活動普及支援事業(厚生労働省)
バナー:ABLE ART JAPAN
バナー:Able Art Company