終了・報告

【レポート】おとなのアトリエつくるて(11月)

2025年11月、18歳以上を対象にした「おとなのアトリエつくるて」を開催しました。今回のレポートは、ファシリテーターの菊池聡太朗さんに書いていただきました。

障害の有無や年齢にかかわらず誰もが参加できる創作の場「アトリエつくるて」に、今年度は2回ファシリテーターとして参加する機会があった。
そのうち11月の回では、主にはじめてアトリエに参加する人(特に18歳以上の方)向けに「おとなのアトリエつくるて」が開かれた。昨年から関わらせてもらっているアトリエは、毎回子どもの参加者も多くて賑やかだったけれど、今回は落ち着いた雰囲気で、秋の陽が差し込む部屋で、じっくり取り組む参加者の姿が印象的だった。

はじめての参加者にとっては、何かとっかかりがあった方が取り組みやすいかもしれないということで、今回は紙版画というテーマを設けた。紙版画は、切ったりちぎったりした紙や、毛糸、拾ってきた落ち葉など凹凸やテクスチャーが出せる素材を台紙に貼って版をつくり、そこにインクを塗って、上から半紙を載せて刷るという基本的な工程は共通している。一方使う素材の組み合わせや絵柄の作り方が参加者それぞれユニークで、全く違うアプローチになった。また何より版画は、絵筆などを使って直接完成形を描くのと違って、紙を剥がしてみるまで最終的にどんなものが出てくるかわからない面白さがある。それぞれが、その時の手の動きに任せて版を作り込む。あるいはそこに何かしらの効果を意図したり期待したりする。それでも最後にはそれを手放して偶然に身を任せるような時間がやってくる。
紙版画をしている隣では、いつも通り黙々と自分の絵を描いている参加者の方もいて、そのばらばらさが、アトリエつくるてらしいと改めて思う。

完成した版画は、それぞれのテクスチャーが面白く、でもどれも刷る前に予想していたものとはちょっとずつ違った姿をしていて、何かの実験結果を観察するように、刷り上がった様々な形と色を囲んで眺めてみる。薄く張った氷のように見えるもの、銀河鉄道の夜に出てくる電車のようなもの、ウサギのような生き物、抽象的な色のパターンが並んだ。
普段は常連さんも多いアトリエだけれど、今回ははじめての参加者もあり、ここに集まる前はお互いを全く知らなかった人同士が同じ空間で、それぞれに手を動かし、作ったものを通してポツポツと言葉を発して、お互いにそれを見たり聞いたりしている。

一方、日常の生活ではそうした場所があまりないことにも思い至り、改めて自分がこの場所にファシリテーターという役割で何度か参加させてもらっていることの意味も考える。その役割というのはアトリエにいる時だけのものではなく、その外での意識や関係にもつながっていると思う。例えば以前アトリエに参加していた親子を病院やイベントの時に偶然見かけて話をする機会があったり、普段の空間デザインの仕事をする時、アトリエで出会った障害のある方たちのことをこの場所を知る前よりも具体的に想像するようになったりした。
創作の場を通して、そこに居合わせた人の手や目や言葉が少しだけ交差する。そして生まれるこの場所での空気が、日常に持ち帰られ、じんわり広がっていく。

文:菊池聡太朗(美術家、建築ダウナーズ、PUMPQUAKES)

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