
終了・報告
【レポート】SOUPの研修2024③「表現する人集合!〜活動内容やその意義をシェアしよう」
- 開催日
- 2025年03月27日(木)
- 時間
- 15:00-17:00
- 場所
- オンライン(Zoom)
- 話題提供者
- ・白鳥樹(しらとり・いつき)、白鳥志穂(しらとり・しほ)
NPO法人アートワークショップすんぷちょのダンス公演や舞台に親子で参加するほか、ふたりとも絵を描くことや創作が好きで「saji & itsuki」という名前で富谷市や仙台市内で二人展を開催したこともある。
・鈴木智博(すずき・ちひろ)
社会福祉法人栗原秀峰会くりこま「ゆめ工房」(栗原市)
1992年生まれ。空想し、物語をつくることが好き。職員との対話で空想を広げ、施設の建築資材の木っ端にイラストを描く。
・田村貴明(たむら・たかあき)
社会福祉法人なのはな会こまくさ苑(仙台市)
好きな場所や行ってみたい建物、好きな人、ほしい物などを絵に描く。作品の隅に書かれている名前や言葉は、本人が作品を見てほしい人やその時の強い気持ちを表現している。事業所ではすべて手びねりの陶芸作品を何年もつくっている。
・堀内豊(ほりうち・ゆたか)[V.D.O.L.C]
仙台市在住。視覚障害者を対象としたスマートフォン講座をせんだいメディアテークで毎月開催するほか、当事者や支援者向けのファッション講座や救命講習の企画に携わる。様々なことに常にアンテナを張り興味がある人と一緒に体験している。 - 参加人数
- 17人
- 研修の流れ
- ・はじめに〜障害者芸術文化活動支援センターとは?今日の研修について
・表現する人へ、インタビュー!
・休憩
・質問コーナー&交流会
・終了、アンケートのお願い
はじめに〜研修の背景
宮城県内でさまざまな表現活動をしている人が集まり、お互いの活動についてシェアしたり、表現する人や、その活動を支援する人の交流の機会をつくろう。「表現すること」によって、どんなことが生まれるのかあらためて考えようと、今回の研修を企画しました。
当日は、表現する人に「どんな活動をしていますか?」「その活動をしているときどんな気持ちですか?」などの質問をインタビューしたり、その表現を支援する人にどんなサポートをしているのかをインタビューしたりしました。また参加者のみなさんにもお互いの活動について紹介してもらい、疲れたときに休む工夫や、作品の保管に困っているといった悩みを共有し合いました。
はじめに、この研修を企画した「障害者芸術活動支援センター@宮城(愛称SOUP)」の概要について、スタッフからお話し、表現にもさまざまなジャンルがあることや、障害のある人の芸術活動にもたくさんの活動があることをみなさんと共有しました。
表現する人へ、インタビュー!
前半は、事前にお願いしていた4組の方にインタビューをしました。
栗原市にある「くりこま夢工房」に通う鈴木智博(すずき・ちひろ)さん、仙台市にある「こまくさ苑」に通う田村貴明(たむら・たかあき)さん、個人で活動する堀内豊(ほりうち・ゆたか)さん、富谷市に住む白鳥樹(しらとり・いつき)さんと白鳥志穂(しらとり・しほ)さん親子の4組です。
それぞれの制作しているものや活動内容について、本人に直接話してもらうことができました。また、実際の作品がある人には、zoomの画面ごしに見せながら紹介してもらいました。
梅雨、七夕、ハロウィンなど、1年のさまざまな行事を描く智博さん。
智博さん「ふだんは、木に絵を描いています。木に白く色を塗って、その次に鉛筆で下書きをします。マッキーで色付けをして、最後にタイトルを描きます!」
「智博さんが実際に見た風景なのですか?」とたずねてみると、「これは僕の想像で描きました」と答えてくれました。
▲ハッピーハロウィンと描かれた作品の空の上に浮かぶ丸い顔は「お化けの月」だそう。
田村貴明さん
▲20年以上前からずっとつくり続けているという陶芸作品「小さなお家」。つくった年代によってかたちも少しずつ違います。
「白、群青色、青、水色、紫……好き」田村さんは、塗ったさまざまな色、好きな色の名前をつぎつぎと話してくれました。
この作品は、エイブル・アート・ジャパンが主催する「きいて、みて、しって、見本市。」内の企画の一つ「ニューカマーセブン」でも展示した作品です。「ハイチュウみたい!」と小さな子どもたちにも大人気の作品でした。
また、田村さんの周りにいる好きな人の顔を描くことも好きです。「ゴシック体の文字も特徴的です」と支援員の三浦さん。
また人物だけでなく、「今ほしいもの」の絵も描くことが好きで、この絵に描いた「トイレ用のオレンジ色のスリッパ」は、無事にゲットできたそう。
視覚障害のある堀内豊さんは、個人でさまざまなイベントや講習会などの企画をされています。今回は「企画する」ことも表現のひとつと捉え、堀内さんが企画したイベントについてお話しいただきました。
最近の活動では、目の見えない人と見える人が一緒に麻雀を楽しむ会をひらいたそうです。麻雀牌に点字シールをつけるなど道具を工夫することで、一緒に麻雀を楽しみます。「できないんだったらできるようにしよう!」と、工夫しながら活動しています。イベントの周知方法についてたずねると、口コミや視覚障害のある人が登録しているメーリングリストを活用しているそうです。
白鳥志穂さん、白鳥樹さんは、ふたりとも絵を描くことや創作が大好きな親子です。二人点を開催したこともあります。樹さんは、「ハート」という名前の飼っているビーグル犬や、好きなものを、絵やものにとことん落とし込みます。志穂さんは、「親もつくることを楽しんでいるから、子どももその様子を見て楽しそうと思うのかもしれません」と言います。
創作だけでなく、NPO法人アートワークショップすんぷちょの「パフォーマンスクラス」に親子で参加するふたりは、ダンスや身体表現も好きで、これまで一緒にステージにも立ってきました。研修の参加者の中に、ダンサーとして活動している方もいたので、樹さんからどんなダンスをしているのかという質問があったり、樹さんの体が動き出す場面もありました。
質問コーナー&交流会
申し込みのときに参加者から寄せられた質問を中心に、さまざまな話題を話しました。
たとえば「疲れていることを自覚できずに描き続けてしまう」という参加者から、「疲れた日はどうしてますか?休みますか?休む日はどう過ごしますか?」という質問がありました。
智博さんや樹さんは、描きたくなくなるときは「ありません」とはっきり答えていました。
「ふだんやらないことをやる」ことがストレス発散になるという人もいて、「アクティブに休む」という言葉が出てきました。
また増え続ける作品の保管場所に困っているという悩みはみなさん共通してあるようです。
もう捨ててもいいかなというものは、行事の装飾などに使っているという施設もありました。
参加者のみなさんからも、自分の活動についてシェアしてもらいました。ふだんの自分の関心ごとからは知ることのできなかった活動を知ったり、関心のある人どうしがつながって一緒に活動をはじめたり、そんなことも生まれたら良いなと思います。
参加者の声(アンケートから)
●研修のなかでもっとも大きかった学びの視点はどんなことでしたか。
・それぞれの暮らしの中で表現をされている方がたくさんのいること
・モチベーションを崩さないためには支援員の準備が滞らないことが不可欠なこと
・皆さんの休み方が色々でした。
・作品を制作する環境やどのような気持ちや環境で制作したのか聞くことができた。長期的に作品を作り続けたからこそ見える変化があるので続けていけるように支援していきたいと感じた。
・その表現活動は、取り組み過程も結果の作品もその方の人となりを表し、さらなる人となりと成り得る。
●研修での学びを具体的に生かそうと考えていることがあればおしえてください。
・利用者さんの作品の出先をどうするかの工夫をしていこうと思います。作ったものをまた改めて違うものに変化させるなど
・強制的に休んだり、家族の言うことに耳を傾けたり、アクティブに休んだり、私もやってみます。
・たくさんの人に見てもらえるよう展示や広報活動に努めていきたい。
・そのような作品などに接していきたいですし、その過程なども見てみたいと思っています。
●自由記述欄(研修へのご意見・ご感想、講師の方へのメッセージ、事務局の運営についてなどご自由にお書きください)
・障害のある方自身が伝えてくださる場がよかった。
・当事者ご本人様や、事業所の方、ご家族の方のお話が聞けてとても参考になりました。
・最近制作で煮詰まってたのですが、いい気分転換になりました。
・作家の方々と活動を支援する皆さんのお話を聞く貴重な機会をありがとうございました。今回の研修会に参加し、オンラインの研修も良かったですが、ぜひ作品を見ながらお話を伺ってみたいなと思いました。
レポート:髙橋梨佳(NPO法人エイブル・アート・ジャパン)