
終了・報告
【報告】南東北・北関東ブロック広域センター研修 第5回「障害のある人と著作権」
- 開催日
- 2025年03月26日(水)
- 時間
- 10:00-12:00
- 場所
- オンライン(zoom)
- 参加者数
- 9人(センター職員6人、行政職員2人、関係者1人)、アーカイブ視聴者数4人
1. はじめに
今回、支援センターで相談件数が増えている「著作権」の話題について、研修を行いました。障害者芸術活動支援センター@宮城(SOUP)の協力委員会に参加された関係から弁護士の上林佑さん(フォレストアップ法律事務所)を講師に迎えて、著作権に関するレクチャーと実際にあった事例紹介を元にディスカッションをしました。
2. 著作権とは?
早速、講師の上林さんによるレクチャーからはじまります。通常1時間以上かかるレクチャーを、短く要点だけまとめていただきました。
●著作権とは
申請や登録しなくても、著作物を創作した時点で創作した者に与えられる権利です。また、著作物と著作物でないものの違いは、「創作的な表現」かどうかの違いです。
●著作の権利とは
著作権(財産権)と著作者人格権があり、著作者人格権には公表権、氏名表示権、同一性保持権が含まれています。
●所有権との違いについて
所有権は、特定の「物(モノ)」を自由に使用・収益・処分することのできる権利です。例えば、絵を購入した場合、絵の所有権は買った人に移り、売ったり捨てたりできます。ただし、絵を勝手に複製してシャツやクリアファイルなどの商品化することはできせん。これは、著作権の中のメインとなる権利の「複製権」、つまり「自分の作品を他人に無断でマネ(複製)されない権利」があるからです。
●作品の利用について
著作者の了解を得ていれば作品を利用することが可能です。なお、著作者は著作権を他の人へ譲渡することもできますが、譲渡してしまうと以後自由に使えなくなってしまうこともあるので注意が必要です。著作権の譲渡の契約において、お互いが明記する内容について細かく確認することが大切です。

最後に、著作権に関わる契約についての説明があり、全国にある知財の相談窓口も紹介いただきました。
・INPIT知財総合支援窓口
https://chizai-portal.inpit.go.jp/
3.著作権にまつわる事例紹介
事例紹介に入る前に、南東北・北関東ブロック広域センター事務局より障害のある作家本人/家族/福祉施設、作品を利用したい企業など、中間支援団体、デザイナーとの関係や、この関係の中で起こりがちちな課題について説明がありました。
次の図は、障害のある作家や家族、所属する施設と作品を利用したい企業やデザイナーとの契約関係を示した図です。作家とその作家の作品を使いたい人が直接契約することもありますが、障害のある作家の場合は、契約の仕方やその内容がわからないことが多いため、中間支援団体が徐々に設置されはじめています。


(1)企業の作品二次利用の事例
1つ目は、商業施設における作品の二次利用にまつわる事例です。本来行われるべき契約が、作家と企業の間で取り交わされないまま進行するところを、中間支援団体が仲介したことで、トラブルを防げたという内容でした。
ディスカッションでは、福祉施設と作家本人との契約内容に関する話題や公募展の要項に関する話題に展開しました。
(2)作家と企業の契約内容の事例
2つ目は、作家がとある公募展に入選して、企業と交わす契約書についての事例です。作家が関係性のある中間支援団体に相談したところ、作家にとっては不服と感じる条件ということがわかりました。その後、家族とともに企業と協議して契約の一部を修正するに至ったという内容でした。
ディスカッションでは、上林さんより、作家本人が契約内容をわからないまま交わしてしまうことへの問題提起がありました。契約内容の中に、不服と感じる部分があってもそのリスクを承知で交わすかどうかを判断するのは本人だが、中間支援団体がその契約の入口でサポートできるように、本人や福祉施設に情報が行き渡ってほしいというコメントがありました。
4.質問や感想の時間
最後に上林さんへの質問や感想の時間です。
参加者>著作権に関する基本的なところは(県内で)ある程度共有しているが、二次利用という話になると途端に弱くなってしまう。契約の仕方が弱いなと思う。今回、具体的な事例を知ることができて対策が練れそうです。
(雛形が一本あるとよい、という話になり、、、)
上林さん>弁護士は、依頼者によって違う立場の契約書をつくる。支援センターは中立的な立場なので、そのタイプの契約書をつくれるとよい。全国的に(支援センターとして)共通のテンプレートがあったほうがよいのではないかと思う。
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参加者>はじめて著作権の話ができて勉強になった。事例の中でも話題にあった公募の利用条件について、「広報等に使用させていただきます」は、どの範囲で使うことができるのか?
上林さん>採用したものについては、別途契約書をとりかわすことが多い。そうでない場合、落選したものなどは、「広報等に使用させていただきます」の文言だけだと解釈の問題で、こう使われると思わなかったなど、トラブルにつながる可能性がある。著作権は、応募した側にあるので、著作権の侵害になる可能性がある。心配であれば、作家に連絡したほうがいいと思う。
5.アンケート結果
・対話と理解と契約の重要性について、改めて気づかされました。公募展などの応募要項に広報利用の一文があっても、ケースによっては合意形成が必要なこともあるということがよくわかりました。
・作家にとって不利益にならないように、ポイントを押さえる力もおかしいと思う感覚も契約書の読み解き力も深めていかなければと思いました。公募展の時の著作権についての書き方、再度確認し直そうと思います。
・著作権研修を来年度企画しておりますが、参加対象に作家家族を含めようと思いました。
・今後、公募展や二次利用を進めていくにあたり、今回の研修の内容を基礎知識としてしっかり理解しておきたいと思います。
・知財について、専門的な相談窓口が各都道府県にあることがわかり、今後の相談に生かせそうです。
レポート:伊藤光栄(NPO法人エイブル・アート・ジャパン)