終了・報告

【レポート】アトリエつくるて2024⑥(12月21日開催)

「アトリエつくるて」は、障害のあるなしや年齢にかかわらず、だれでも参加ができて、自由に創作を楽しむことができるオープンアトリエです。
現在は、参加者の創作を見守り、ともに表現を楽しむ「ファシリテーター」として、美術作家の佐竹真紀子さん、アーティストのしょうじこずえさんと一緒にこの場をつくっています。
今年度は、アトリエつくるてのようなオープンアトリエの活動をともに考える仲間が増えたらいいな、また参加者のみなさんが新しい表現や制作方法に出会う機会になればいいなという思いから、10月・11月・12月のアトリエに、美術や造形にかかわるアーティストを一人ずつ「ゲストファシリテーター」に招いて開催してきました(ゲストファシリテーター紹介)。
10月・11月・12月のアトリエレポートでは、ゲストのみなさんが初めてアトリエに参加して感じた感想コメントを中心に、その様子をお伝えします。

12月のアトリエ

12月のゲストは、菊池聡太朗(きくち・そうたろう)さん。風景を主題としたドローイングや立体作品を制作しているほか、空間や展示什器のデザイン、制作を行う「建築ダウナーズ」というチームや、編集や展示の企画を協同で行うグループのメンバーとしても活動されています。アトリエやエイブル・アート・ジャパンの事務所でも使っている、高さを変えられる木製の架台は、菊池さんが所属する「建築ダウナーズ」のみなさんにつくってもらったものです。


菊池聡太朗さん


建築ダウナーズ制作の架台。小さなお子さんが使いやすいよう、高さを低くして使いました。

この日は6歳から60代まで11人の参加があり、付き添いの人やスタッフもふくめると20人が集まりました。ファシリテーターの佐竹さんからゲストの菊池さんの紹介があったあと、いつもどおり参加者のみなさんにも一言ずつ自己紹介をしてもらいます。

「今日は〇〇って呼んでいいよ」
アトリエに継続して参加している小学生のTさんが、佐竹さんにこそっと自分のニックネームを教えてくれるなど、いつもよりちょっと距離が縮まったような場面がありました。


画材コーナーには、菊池さんが持ってきてくれた木や竹の端材も。フェルトでぬいぐるみのようなものをつくっていた方は、竹の筒にフェルトを載せて、チクチク針を刺していました。全体の大きさのバランスを見るのにも、竹がちょうど良い台になっていたようです。


その日につくったものをお互いに見合う時間では、「今日はここに来てから思いついたエピソードを漫画にしました」「配信で見た舞台の俳優を描きました」など作品にまつわる話を聞いたり、色鉛筆でいろんな色の組み合わせの丸を描いた人の絵をみんなで見て、「どの組み合わせが好き?」と質問してみたり、「このテーブルでは参加者さん同士でこんなことが起きていたよね」と共有し合ったりしました。

ここから、菊池さんの感想を紹介します。

アトリエつくるてに参加して(文:菊池聡太朗)

 6歳の男の子とのやりとりが印象に残っています。最初は紙パレットに絵の具を一心不乱にしぼりだし、それを筆でかき混ぜる。何かを描くために絵の具を出すというより、その行為自体の感触を確かめるみたいに、もくもくと仕事をしているようにも見えました。パレットの上で混ぜられた絵の具がいきいきしていたので、側にあった色画用紙にパレットをひっくり返して直に描くような仕草をしてみると、それに反応するようにペタペタとしばらく何枚かスタンプをして、また他の作業に取りかかる。あるいは、粘土をヘラで切り分ける時に、僕が違う切り分け方をしていると、すぐにそれまでやっていたのとは違うやり方を試してみる。結果的に、効率的ではないけれど、とても斬新な切り分け方を編み出していて、それら瞬時の応答にびっくりさせられます。
 その男の子と他の参加者の方のやりとりも印象的でした。年上の参加者の方がクリスマスのモチーフを迷いなくどんどん描いていくのをじっと見てから、それを真似して、お母さんに頼んで描いてもらった線(お母さんも上手!)を塗り始める。相手もどこかそのことを意識している感じがして、向かい合った席同士、そこに言葉のやりとりはほとんどなかったと思いますが、他の人が動かしている手をじっとみて、自分も動かしてみる、そしてまた別の何かができる、目と手のやりとりみたいでした。
 参加者の方の中には、自分のスタイルや好きなものがわかっていて、気負いなく、とても自然に自分の創作に入っていく方もいました。ひと段落すると自分のペースで休憩したり、描いているものについてどんどん教えてくれたりして、また淡々と仕事に戻っていました。
 新しい感触に出会ってすぐに反応して手を動かすこと、普段やっていることの延長のように、職人さんみたいに取り組むこと、歩き回ったりゲームの話をしたりすること、公園に行ってきますと宣言して外に遊びに行ってまた戻ってくること、どれもが対等に、同時に一つの空間で起こっていた光景が心に残っています。




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感想コメント寄稿:菊池聡太朗(美術家、建築ダウナーズ、PUMPQUAKES)
レポート:高橋梨佳(NPO法人エイブル・アート・ジャパンスタッフ)

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