終了・報告

報告レポート スウプノアカデミア2023「混みにケーション~スナオに「困る」を表現しよう」

開催日
2023年12月02日(土)
時間
14:00-16:00(13:40受付開始)
場所
せんだいメディアテーク7階 スタジオb および オンライン
参加人数
合計20人
<参加者7人、付添者1人、ボランティア6人、手話通訳2人、スタッフ4人>
概要
毎日の暮らしで、人間関係で、どんな困りごとがありますか?
「こんな困ったことがあったなあ」「困ったとき、こうしたよ」「こうなったらいいなあ」。それぞれの体験を話して共有しつつ、困りごとやそれにまつわる思いを、いろいろな方法で表現してみましょう。詩、文章、絵、写真、歌、何でもOK!
[テーマ設定者]まい
[プログラム担当者]佐竹真紀子(一般社団法人NOOK)

1.皆の「困りごと」は、どんなこと?~「わがままじゃないよ」

自己紹介をしたあと、まいさんの情報アクセシビリティ法に関することや障害種にあわせた配慮の事例などを紹介から始まりました。今回のプログラムは、情報アクセシビリティの法律化(※)や合理的配慮の義務化によって配慮してほしいことを言うことは「わがままじゃないよ」ということをもっと知ってもらいたいと思って企画したとのことでした。

はじめのワークは「皆の「困りごと」は、どんなこと?」です。暮らしの中、人間関係などさまざまな場面で、どんな困りごとがそれぞれあるのか、グループの中で話しあいながら共有しました。まずは画用紙にキーワードを書いて、そのあとに発表しあいました。グループは2つに分かれました。
コンビニで起こったトラブル、車いすユーザーの方からは歩道のアスファルトで木の根で盛り上がっているところが移動しにくい、学生からは勉強が大変、朝起きれない、など、たくさんの困りごとが出てきました。

※障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法のこと。

2.「困りごと」の表現を考える

ここから「困りごと」の表現を考えるワークです。
まずは、まいさんから表現の一例として、自身が生活の中で苦労や感じてきたことなどを文章で表現したものを、所属する団体のSNSから紹介していることを話しました。
次に佐竹さんから、さまざまな表現の方向性や方法を共有して、ワークが始まります。多くの参加者が、どう表現できるのか不安そうな表情を浮かべていました。

グループワークが始まると、参加者やボランティア、スタッフ同士で話しあいをはじめ、だんだんと話がはずんでいく様子が見れました。


▼当日のスライド資料の一部(作成:佐竹真紀子)

3.発表の時間

グループごとに考えた表現を発表をしました。手法を紙に書いて発表したり、演劇やサインなどその場で表現ができる人はその場で表現を発表して、おわりの時間となりました。
困りごとのテーマからうまれた表現の一部を紹介します。

・テーマ:物が捨てられない→捨てるものを写真に撮って、アルバムにする手法。
・テーマ:初対面できんちょうする→「初対面あるある」にして、いろんなあるあるを発表。
・テーマ:学校の掃除の時間に虫が出る→その場面をダンスで。
・テーマ:相手にどう思われるか気になる&相手に気持ちが伝わらない→2つのシチュエーションを漫才で笑いに。
・テーマ:朝起きれない→段ボールに「7:00に起こして」と書いて首から下げる。

■スウプノレコード(参加者の感じたことや学んだこと)

・グループで共有することで、自分だけじゃないんだと感じた。
・最高でした。
・書き出すことで心の整理ができて、良い方法だと感じました。
・おしゃべりをして、漫才を見て、何をしに来たんだっけという感じが残っています。昨晩、何を話そう、何で表現しようとごちゃごちゃ考えて、少し気持ちが暗くなっていたのですが、人と会って、おしゃべりをして少し気が楽になりました。
・人それぞれ様々なことで悩んでいることを学びました。(中略)悩みをどう表現するかと問われた時に、案がすぐに浮かんでいる人がいて、すごいなと思いました。
・イベントのテーマである「困りごと」について雑談をまじえながら交流・共有することができて、とても良い機会を得られてよかった。「困りごと」の表現のしかたでもコントなど個性をよく感じられるものが多く楽しいイベントでした。
・障害のある人の実際に感じている困りごとを、自身のエピソードをまじえて聞くことができ、とても勉強になった。

■ボランティアとテーマ設定者、プログラム担当者の振り返り

・鈴木汰斗(ボランティア、東北大学)
今回のプログラムに参加することで、実際に障がいを持つ人がどのようなことで困っているのかについてお話を聞くことができ、とても貴重な経験をすることができました。私にとって、困っていることをどう表現するかというお題はとても難しいものでしたが、他の参加者の方はスラスラと案が思い浮かんでいるように見え、すごいと思いました。

・まい(テーマ設定者)
今回のタイトルは、コミュニケーションは手話で、(Communicationの)CとCや、頭と心をあわせるような形で表されます。この中には困っていることや気持ちという言葉も入っているんだろうなと思い、また、混み合っているという混むなど、いろいろな意味から「混みにケーション」という名前にしました。
プログラム中、参加者と災害のことなどを話していて、「世の中に障害のない人は一人もいないよね」という祖母の口癖を思い出しました。この言葉も頭のすみに置いておいてほしいなと思います。


・佐竹真紀子(プログラム担当、美術作家、一般社団法人NOOK)
今回は「困りごと」がテーマでした。困りごとと一口にいっても、どんなことで困っているのかは人それぞれに当然ちがうもの。できるだけ解決してなくしたいものもあれば、気持ちに折り合いをつけてなんとかなるものもある。困りごとに対する付き合い方も、当人やそのときの状況によって異なるはずです。
テーマ設定者のまいさんは、障害のある人のアクセシビリティについて長く考え、発信し、自らの学びの芯にしています。作戦会議を重ねる過程では、自分たちの権利を周囲にもっと知ってもらいたいのになかなかうまくいかない、という葛藤をひしひしと感じました。みんなで学ぶ場をひらくにあたり、「困ってることは素直に表に出していいんだよ。どんなことでも、それは些細でもないし、わがままでもないんだよ(もっと話していこう!)」とまいさんが語ること自体が、他の人の語りづらさをほぐしていくことにつながるのではないかと、一緒に伝え方を探しました。

当日はさまざまな人が車座になって、困りごとや自分たちの日常を話して聞き合いました。「確かに!」「私も同じかも」「それは今まで気づかなかった」と、ゆっくり掘り下げる時間となりました。
困りごとは、一方で、ずっと考えていると辛くなってしまう側面もあります。「真面目にならずにやわらかくしたいよね」と、まいさんとも準備段階で話していました。そのため、後半の時間は、それぞれの困りごとをもとに、何か別の形や方法や表現にしてあらわしてみよう!と実験的なタイムを設けてみました。
近い困りごとを持つ人を見つけて、本音トークや「〇〇な人、あるある」を探すペア。困りごとをコントやダンスにして、笑いに変えるペア。とてもカオスな回になりましたが、「困りごと」といつもと違う角度で向き合ったり、誰かに伝えたりするヒントが、たくさん芽生えていたように思います。

レポート:伊藤光栄(NPO法人エイブル・アート・ジャパン)

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