終了・報告

報告レポート スウプノアカデミア2023「自分も相手も大切にする自己表現 『アサーション』を学んでみよう!」

開催日
2023年10月14日(土)
時間
14:00-16:00(13:40受付開始)
場所
エイブル・アート・ジャパンフリースペース(仙台フォーラス7階)
参加人数
合計21人
<参加者10人、付添者2人、ボランティア4人、講師1人、スタッフ4人>
概要
相手に遠慮して言いたいことが言えなかったり、自分の気持ちを相手にどう伝えたらいいか分からず、困ったりした経験はありませんか?
今回は「アサーション」というコミュニケーションの手法で、相手を尊重しながら自分の気持ちも大切に上手く伝える方法を学んでいきます。講師のお話を聞いたり、実際に伝え方の練習をしたりして、みなさんで一緒に考えていきましょう。

[講師]加藤 大延さん(認定NPO法人Switch 精神保健福祉士)
[テーマ設定者]ともさん
[プログラム担当者]髙橋梨佳(NPO法人エイブル・アート・ジャパンスタッフ)

■内容

「相手に言いたいことがうまく伝えられない、自分の言いたいことを言い過ぎて気まずくなるなど両極端な場面が多かった。」という経験から「アサーション」という方法に興味をもったともさんと一緒に企画したプログラムです。
自分も相手も大切にする気持ちの表し方をまなびました。

1.ユーメッセージとアイメッセージ~「やってらんねっちゃ」と「(あなたの仕事を)引き受けたいのですが」

会場にたくさんの参加者がいる。会場の奥でスクリーンで資料が投影されており、その左横に講師が立っている。ともさんが参加者の前で紙をもって読み上げている様子。

今回は、3グループにわかれて、加藤さんによるアサーションの説明と、実際の場面をイメージしてみるワークショップを交互にしながら行いました。
ワークショップはシチュエーションで考えるもので、そのシチュエーションは事前にとったアンケートを参考に考えました。

前半は、次の3ステップでお話をお聞きしました。

(1)コミュニケーションについて
(2)自分と相手、どちらが大切な表現?
(3)アイメッセージ、ユーメッセージ

グループ1のメンバー4人が真剣にワークシートを書いている様子。

(1)では、コミュニケーションが「言葉のキャッチボール」で、相手の言葉を受け取りやすい体勢と相手が取りやすい言葉を投げることが大事であるとのことです。

(2)では、最初にセールス電話のときどのように対応をするか?というテーマで、グループごとに話しあうことから入りました。グループごとに「すぐに切る」「話を聞く」など、いろいろな対応方法がでました。
このグループワークで想像したイメージを元に、「アグレッシブ(攻撃的)」「ノンアサーティブ(非主張的)」「アサーティブ(自他尊重)」の3つの伝え方を説明しました。
アサーティブとは、自分の主張だけでもなく、相手の主張だけでもない気持ちの表し方とのことでした。

(3)で、徐々にアサーションの方法に入っていきます。ここでは、アイメッセージについて学びました。「アイメッセージ」は、自分の気持ちを感情的にならずにストレートに伝えることで、反対に「ユーメッセージ」は、自分の気持ちを感情的に相手を非難するような言葉で伝えることです。
具体的にイメージするために、「仕事が手いっぱいだが追加の仕事を頼まれた」「家族が部屋を散らかしている」という2通りのシチュエーションでアイメッセージとユーメッセージの2つを考えるワークをしました。

アイメッセージでは「(あなたの仕事を)引き受けたいのですが、仕事がたまっているため(中略)」「心配だよ」「(部屋の散らかりようが)アートだね」、ユーメッセージでは「やってらんねっちゃ」「いい加減にして!」「早くやれ!」など、いろいろな意見がでて各グループ、話が盛り上がります。ユーメッセージの話題では笑いが起きていました。

アサーティブな表現をやってみる!「明日から好きになるから待っててね」

グループ2のディスカッションの様子。奥には手話通訳者が聞こえない人に向けて手話通訳している。グループ3のディスカッションの様子。

後半はアサーティブな表現をより実践的に学びました。加藤さんは、イメージしやすいようにここまでのシチュエーションを例にあげながら表現の方法を説明しました。

アサーティブな表現のポイントとして、次の3つを話します。①事実に触れる(非難がましくなく、責めない)、②アイメッセージで自分の気持ちを素直に伝える、③代わりの案を提案する。

「仕事が忙しかった日に、早く寝ようとしたら、友人から電話がかかってきた」「友人と食事に行き、赤貝が好きでないけど、赤貝をすすめられた」の2つのシチュエーションで、どう断るかをワークシートに書いて、グループ内で実際にやってみました。

「明日から好きになるから待っててね」「すすめてくれてありがとう。でも苦手なんだ。」というアサーティブな意見から、「貝アレルギーなんだよね」とウソをつく意見などでました。

最後は、参加者の質問に加藤さんが答える時間です。
質問に答える中で、アサーションを無理して言う必要はなく、むずかしいときは「言えない部分があります」と正直に言うという方法もあります、と話していました。

■スウプノレコード(参加者の感じたことや学んだこと)

・すごい内容だと思います。めっちゃ内容がすばらしい。学校で教えたいよね。言えと言って、日常でできるわけでもないよね。
・モヤッとした気持ちを感じることはしかたない、と言ってもらえたことはかなりスッキリした。テーブルの人と言葉の共有ができたのもとてもいい時間だった。
・アサーションという初めてきくことばを学びました。アイ・ユー的な表現やアサーションの表現、いざ考えてみるとむずかしかったですが、人生で為になるやり方だなと思いました。
・今までは、自分ばかりの表現でしたが、相手のみになることも考える必要があると改めてコミュニケーションのあり方を考えるきっかけとなった。素晴らしくためになる勉強でした。
・私は、、まず相手の言葉をキャッチできません。集中できません。まずは、言葉(気持ち?)をキャッチできるようになりたいです。

■テーマ設定者と講師、プログラム担当者の振り返り

・とも(テーマ設定者)
今回、企画から開催までの期間が少なく、自分の経験談を元に考えるのが難しかった。
本を見ただけでは学べないようなワークがあって、実際にやってみてわかることがあった。モヤモヤした気持ちをもつことが悪いことじゃないということがわかった。
苦手な食べ物の断り方を考えるワークで、私と同じグループの方の「明日から好きになるから待っててね」という断り方がよかった。

・加藤大延(認定NPO法人Switch、精神保健福祉士)
この度はお話させていただく機会をいただき、ありがとうございました。「アサーション」というものは言葉だけ聞いても難しい物だったりしますが、皆さんワークなどを通して楽しんで参加されていたようで、私もとても楽しかったです。また、皆さんそれぞれの言葉でワークに取り組んでいただき、言い回しや表現などこちらが「参考にさせてもらいたい」と思うようなものもありました。また機会がありましたら、皆さんと一緒に日常の中での困りごとなどを考えていく場に参加させていただければと思います。

・髙橋梨佳(プログラム担当、NPO法人エイブル・アート・ジャパン)
テーマ設定者のともさんが「まなびを考える会」でキーワードにあげていた「アサーション」について、実は私自身も同じような悩みを持ち、まなびたいと思っていたので、一緒に企画を担当しました。
友達の誘いを断るときなど、実際によくある場面を想定して言葉を考え、グループ内で共有するワークでは、ほかの人の言い方を参考にすることができ、今後同じような場面があったときに実際に取り入れていこうと思いました。
今回は、だれでも参加OKの回にしたことで、付き添いとして来た保護者の方や大学生、社会人の方など、幅広く申込があり、障害のあるなしにかかわらず関心の高いテーマなのだと実感しました。今回のように、多くの人が抱えているコミュニケーションの問題について、また一緒に考える機会をつくることができたらいいなと思います。

レポート:伊藤光栄(NPO法人エイブル・アート・ジャパン)

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