終了・報告
【レポート】「アトリエつくるて展」をふりかえって
こんにちは!「アトリエつくるて」(以下、アトリエ)のファシリテーター(見守り人)、佐竹です。
今年のアトリエは、美術館での鑑賞会にはじまり、創作活動をし、最後は参加者たちによる作品展を開いた、盛りだくさんな一年となりました。
このレポートでは、参加者のみなさんとつくった展覧会「アトリエつくるて展」をふりかえりたいと思います。
アトリエの外側の“つくる・みる・話す・いる”
アトリエが誰でも参加できる場であってほしいという思いから、今年からチラシのキャッチフレーズが“つくる・みる・話す・いる ともに表現する場所”に変わりました。
その意味でいうと、展覧会は“つくる・みる・話す・いる”人たちを、アトリエの外側につくる行為です。
そもそもの話なのですが、このアトリエでは、必ずしも人に見せる目的でみなさんが表現をつくっているわけではありません。
なので、表現を外にひらくにあたり、まずは自分たちで、普段のアトリエでの創作活動とは一味ちがう“つくる・みる・話す・いる”にトライしました。
どうする?を相談しながら決める
展覧会をひらくまでには、決めることが意外とあります。
どの作品を展示したい?どんなふうに見せたい?どんな作品タイトルにする?
この過程も、参加者本人や一緒にいる家族たちと相談しながら進めました。
準備の時間では「額ってどうして四角い形ばかりなんだろうね?」と、ある人は紙を丸く切ってお手製の台紙額を発明した人も。見せ方でも自分の発想を大事にしていたのが印象的でした。
驚いたのが、作品に添えるキャプションのためにみなさんが書いた“ことば”や“文字”。
描いた絵についての一言も、それぞれの持ち味が出ます。アトリエ活動の中でおしゃべりの流れで聞くのとはちがう、つくり手や作品の一面があらわれていて、“ことば”と“文字”もまた大切な表現のひとつだと実感しました。
準備の様子
参加者による手書きのキャプション
表現と、表現が生まれる場づくりを、あわせてひらく
展示の会場は、仙台フォーラス7階のアートギャラリー、TURN ANOTHER ROUND。
アトリエを開催した会場と同じフロアにありつつ、ギャラリーをお借りするのは今回がはじめてです。
展示の設営では、作品の壁かけも、あれこれ試しながら、みなさんと共同作業でおこないました。大変そうに見えて、一回試してみると案外自分でもできる……と、思ってもらえているといいなと思います!
設営の様子
ギャラリーは商業施設内で往来もあり、会期中はさまざまな人が展示を眺めていました。
出展者のみなさんが知り合いを連れてくることもあれば、たまたまやっていたから見ていこう、と足を止める鑑賞者も。
冒頭で“つくる・みる・話す・いる”について触れましたが、“いる”は広い意味で、“知っている”“気になっている”人たちも含まれるはず。今回の展覧会をきっかけに、つくり手たちのあいだで培われる豊かな表現やそのやり取りと出会う人が増えてほしいなと思い、アトリエの場を伝えるコーナーも用意。ある日のアトリエの様子や、「アトリエに参加して変化はありましたか?」といった、アトリエ参加者のアンケートへの回答も展示しました。
展覧会場の様子
アトリエの場を伝えるコーナー
みんなで囲んで新発見
さて、関連イベントの「みんなで見るツアー」が展覧会の目玉です。
当日は展覧会に出展したつくり手たちとその家族を中心に、ひとりひとり順番に作品の前に立ってお話ししました。ツアーには一般のお客さんも参加しました。
みんなで見るツアーの様子
マイクを持つには緊張するかな?とスタートしましたが、自らの表現や背景にあるエピソード、好きなこと、こだわったところを、みなさん各々の言葉で語っていました。
「これまで表現してこなかった、喜怒哀楽の“楽”を描くようになりました」「このモノレールは19〇〇年に計画中で未完成だったもので、これは予想図なんですね」
「4と5以外に好きな数字は?」と、思わずツアー参加者から質問が飛ぶターンも。
出展者とファシリテーターのこずえさんとの間で濃密なつくり手トークが繰り広げられたターンでは“まざる”瞬間を自然なものとして感じました。
仕草や動きによるコミュニケーションが得意な人たちも、次は自分の出番だ!というときに、マイクを握ってたくさんのリアクションを発していました。
アトリエの場はどうですか?とご家族に聞いた際には「本人も慣れてきて、ここは自分で来たいと思って来ているようです」という答えがあり、嬉しい瞬間でした。
ツアーを終えた後にも、出展者やツアーに参加したお客さん同士で作品を介して談笑していたり、はたまた一曲ライブがはじまったりと、ギャラリー空間であっても、ゆるりとそれぞれの時間をもつことができました。
表現を見せるというインプット
展覧会という形で表現や活動を外にひらき、さまざまな人と場を囲む過程には、創作活動だけでは気づかなかった側面の発見も、これまでアトリエで参加者さんと過ごしてきた時間の積み重ねの実感も、どちらも詰まっていました。
何らかの情報や刺激、感情を自分の内に取り込むインプットと、それを表に出すアウトプット。
自らの表現物を他者に公開する行為って、アウトプットの延長上にありつつ、実はインプットがとても多い行為のでは?……と感じていたら、展覧会に出展したある参加者さんが、展示の空間を絵で表現していました。
アトリエの活動もその作品展も、今日なんかいい日だったなあ、で終われていたら、それだけでもう充分。
一方で、見せる場が誰かとの大事なコミュニケーションとして本人の記憶に残ったり、見せる場からまたあたらしい表現が生まれたりすることをふまえて、その機会をつくり続けられたらとも思います。
レポート:佐竹真紀子
参加者による展示空間の絵
絵に描かれた展示空間