終了・報告

南東北・北関東広域センター 令和4(2022)年度 報告

事業内容

南東北・北関東ブロックは、6県のうち4県に障害者芸術文化活動支援センター(以下、支援センター)があり、2県が未設置である。障害者芸術文化活動普及支援事業以後、令和3年度にブロックの支援センターがはじめて設置され、令和4年度は2年目の活動となった。支援センターとして、宮城県(平成26/2014−)・栃木県(平成29/2017−)・福島県(平成31/2019−)・山形県(令和2/2020−)、「準備室」として茨城県(令和3/2021−)・群馬県(令和4/2022−)が活動した。



ア 都道府県の支援センターに対する支援
1)4県の支援センターにおける課題(相談支援・事業評価・行政との協働等)を検証し、ブロック会議と研修(同日開催で全5回、ウ.で詳細記載)、事業評価(研修の内2回、キ.で詳細記載)、なんでも相談会(3回)を実施した。未設置県の関係者と、テーマにより各県の行政の担当者も参加した。

■なんでも相談会
2022年8月23日、10月18日、2023年1月17日(すべてオンライン)
「研修に聴覚障害者から申込があった、情報保障の手法について教えてほしい」、「自治体の予算規模や内容について知りたい」、「支援センター設立に向けた事業者募集の審査の視点について意見交換したい」など、個別相談に応じた。


2)厚生労働省ならびに全国連携事務局のつなぎ役として、ブロック会議の場を活用し、各種連絡(改訂版マニュアル作成状況、全国連絡会議の予定)、第2期「障害者による文化芸術活動の推進に関す基本的な計画」(案)有識者会議での論点、などを共有した。



イ 支援センター未設置の都道府県の事業所等に対する支援
茨城県と群馬県において、現地に「障害者芸術文化活動支援センター準備室」を設置し、地域の担い手とともに、支援センターとしての業務を実施した。


1) 茨城県における支援
初年度につづき、2法人2人体制で「いばらき障害者芸術文化活動支援センター準備室」を設置し、「相談支援」「人材育成事業」「関係者のネットワークづくり」「情報収集」を行った。

■相談支援の実績(通年)
・40件(個人18件/団体15件/福祉施設6件/文化施設1件)
・相談支援から発展した事業
① ぽかぽかの会(茨城県守谷市)、ユーアイファクトリー(茨城県水戸市)
2022年10月17日〜23日、イオンタウン守谷の空き店舗を活用した作品展示。
②子どものためのワークショップ2022 「美術館のようなものをつくる」
2022年11月26日、27日、会場/主催:茨城県近代美術館、参加者50人、高校生サポーター13人、障害関係なく参加者を募り、美術館について皆で考えるプログラムを実施。

■人材育成および関係者のネットワークに資する事業
①「第2回 福祉とアートのオンライン交流会」
2022年8月12日(オンライン)、参加者38人(一般公開)

②「第2回 福祉とアートのシンポジウム」
2022年12月10日、オンライン開催および茨城県水戸市内会場、参加者104人(一般公開)
*①②いずれも、第1回は令和3年度に実施
■情報収集として施設/個人等へのヒアリング実施(通年)
14件(個人1件/福祉・医療施設9件/文化施設2件/企業2件)
■メディア掲載
2022年12月2日茨城新聞、12月15日茨城新聞


2) 群馬県における支援
群馬県障害政策課と連携し、「ぐんま障害者芸術文化活動支援センター(仮称)準備室」開設のための公募を実施し(5月・再公募8月)、2法人3事業を採択。

■人材育成および関係者のネットワークに資する事業
①「森のペイントワークショップ」(写真)
2022年10月8-10日、会場:ルオムの森(群馬県吾妻郡長野原町北軽井沢)
ファシリテーター:アート1人/ドラムサークル1人、参加者約350人(一般公開)

② 「障害のある人の表現のむこうにあるもの」ワークショップと事例発表
2022年11月30日、会場:群馬県青少年会館
講師:関 孝之(ながのアートミーティング )
・群馬県内の実践者4人、参加者29人(福祉サービス事業管理者・サービス管理者対象)

③「アートと福祉を繋ぐ会―障害のある人のアート活動支援の基礎研修と交流会―」
2023年1月25日、会場:群馬県庁 2F ビジターセンター・群馬県庁昭和庁舎第1展示室、①②③後援:群馬県、①共催(企画・運営):NPOあめんぼ
②③共催(企画・運営):一般社団法人あったらいいなをカタチに、群馬県社会就労センター協議会

■情報収集として施設/個人等へのヒアリング実施(通年)
14件(個人1件/福祉・医療施設13件)

■メディア掲載
2022年10月7日上毛新聞(1面)、10月8日毎日新聞、2022年11月30日群馬テレビ、2023年1月26日上毛新聞、2月2日上毛新聞



ウ 芸術文化活動に関するブロック研修の開催

1) ブロック研修
各支援センターに不足している支援スキルやノウハウを具体的に学ぶことに努めた。

■第1回「多様なセクターと協働する、これからの支援センター像にむけての勉強会」
2022年7月25日(オンライン)
講師:大澤寅雄(株式会社ニッセイ基礎研究所)、参加者11人
厚生労働省令和2年度障害者総合福祉推進事業「全国の障害者による文化芸術活動の実態把握に資する基礎調査」(令和3年3月株式会社ニッセイ基礎研究所)で浮き彫りとなった課題やポイントを確認し、障害のある人や社会にとって必要とされる支援センター像と具体的役割について意見交換した。

■第2回「自治体と支援センターと協働で評価目標をつくろう」
2022年9月12日(オンライン)
講師:長津結一郎(九州大学)、参加者21人(キ.に詳細記述)

■第3回「相談支援の流れをつかむ〜文化セクターとの連携を軸に考える」
2022年11月28日(オンライン)
講師:田中真実(認定NPO法人STスポット)、参加者10人
第1回の研修で課題となっていた「文化セクターとの連携」に関連したケーススタディを用いながら、相談支援の流れを体験・確認する内容とした。講師の所属団体に実績があるテーマであることから、「文化セクターとの連携とは具体的にどういうことか」を学習するに至った。

■第4回「南東北・北関東ブロック障害者芸術文化活動支援センター研究発表会」
2023年2月11日、会場:せんだいメディアテーク1階オープンスクエア
発表者として各支援センター担当者等、参加者:35人(一般公開)
「第5回 障害のある人と芸術文化活動に関する大見本市 〜きいて、みて、しって、見本市。」の会期にあわせて実施。3つのテーマを設け、各支援センターの魅力と役割を社会発信するような機会に努めた。
【テーマ1】美術館運営を母体とした「支援センター」事業の力とは(福島県・栃木県)、発表キーワード:作家と作品の情報収集、作品展示、作品販売、文化のネットワーク、プログラムの質
【テーマ2】ネットワークハブとしての「支援センター」事業の未来(山形県・茨城県)、発表キーワード:人財の収集・発信、広域・異分野マネジメント、アーティスト・デザイナーとの協働
【テーマ3】「中間支援組織」である支援センターがあることでかわる地域と未来?!(群馬県・宮城県)、発表キーワード:支援センターの機能〜相談支援、人材育成、関係者のネットワーク、発表機会の確保、情報収集・発信

■第5回「自治体と支援センターと協働で評価目標をつくろう!」振り返りの巻
2023年3月9日(オンライン)
講師:長津結一郎(九州大学)、参加者14人(キ.に詳細記述)


2) ダンスワークショップ
ブロック内の支援センターが舞踊分野について学ぶ機会をつくり、地域の障害のある人たちの芸術文化活動の選択肢を増やすことに努めた。初年度は宮城県で鑑賞機会をつくったが、2年目となる本年は来場した障害のある人・支援者(と潜在的な支援者)が集まり、宮城県と山形県で人材育成および関係者のネットワークを構築する目的でワークショップを実施。

■仙台会場:2022年11月10日 
会場:日立システムズホール仙台 2階交流ホール
午前の部・支援者向けダンスワークショップ、参加者18人
午後の部・障害のある人とのダンスワークショップ、参加者30人

■山形会場:2022年11月11日(写真)
会場:山形市福祉体育館
障害のある人とのダンスワークショップ、参加者15人
*仙台・山形共通 講師:河下亜紀(インテグレーテッド・ダンス・カンパニー響-kyo 教育普及部顧問) /インテグレーテッド・ダンス・カンパニー響-kyoダンサー3人/プロデューサー1人
(写真:宮城、山形のダンスワークショップ)

エ ブロック内の連携の推進
・ア.ウ.の事業はすべて、ブロック内の連携の推進を目的として実施した。
・ブロック連絡会議および研修では、支援センター間のコミュニケーションを潤滑にし、中間支援組織として互いの知恵や課題をわかちあい、ともに質の向上を図ることを目的にするようファシリテーションに努めた。
・ブロック研修「南東北・北関東ブロック障害者芸術文化活動支援センター研究発表会」では、はじめてブロックの関係者が対面で集まり、情報交流をすることもできた。


オ 発表の機会の確保
・イ.の事業では茨城県と群馬県の障害のある人たちの美術等の発表の機会の確保を、ウ.−2)の事業では宮城県と山形県の障害のある人たちの舞台芸術の発表機会の確保に資する活動を、それぞれ行った。


カ 自治体における基本計画策定の推進
・未策定の自治体は、茨城県と群馬県でいずれも支援センター未設置県。必要性は認識している。
・仙台市(政令指定都市)は、令和4年3月に「仙台市文化芸術推進基本計画検討懇話会」を設置。弊団体代表も委員として参加し、基本計画の策定に貢献できるよう努める。


キ 事業評価及び成果報告のとりまとめ
1)協働型評価手法を通じて、各支援センターの現在地を知る
ウ.−2)において、支援センター職員と自治体担当者と協働型評価を実施した。

① 「自治体と支援センターと協働で評価目標をつくろう」、2022年9月12日(オンライン)、参加者21人
② 「自治体と支援センターと協働で評価目標をつくろう!」の振り返り、2023年3月9日(オンライン)、参加者14人
① ②とも講師:長津結一郎(九州大学)
・障害者芸術文化活動普及支援事業の「支援センター活動のコツ(効果的援助要素)チェックリスト」を活用し、令和元年度(全国一斉調査)と令和4年度8月現在とを比較し、2021東京オリンピックおよび2020−コロナ禍をはさみ、各支援センターがどのような状況にあるかを分析・確認しあった(下図・参考資料)。
・とくに弱点となっている領域をひとつ抽出し、9月に実際に目標を設定、3月にその振り返りを行った。支援センターと自治体が大切にしている視点や価値を確認しあうこと、また支援センター間の経験値により「支援センター活動のコツ」を具体的に学んだ。


2)全国連携事務局が実施する、本広域支援センターの成果を報告書にまとめた。
3)すべての事業においてアンケートを実施し、「学びの大きかった視点は何か」「今後の支援センター業務に生かしていく作業は何か」を問い、参加者の反応と様子を汲み取りながら活動した。
4)広域センターとしての活動を随時、県および広域センターのウェブサイトとSNSで社会に発信した。
・ウェブサイト:投稿数110件(広域センターは内17件)、閲覧数38,689件
・SNS:投稿数289件、閲覧数17,622件

事業による成果

ア 都道府県の支援センターに対する支援
1) 支援センター(スタッフ)が、社会情勢の変化に対応できるようになる
・ブロック内の情報交換・研修・相談対応などで、1.本事業が福祉・芸術文化・社会教育などの分野横断型になってきていること、2.新型コロナウイルス感染症以後は社会変化が著しく障害のある人を取り巻く状況が変化していること(感染対策・労働・情報コミュニケーション等)、3.第2期計画の策定でも当該支援センターが担う社会的役割が検証されていること、などを意識して活動を実施した。アンケートには、地域資源の発掘と連携にかかわる意志、オンライン下の情報保障、文化セクターとの協働や生涯学習への関心などが現れている。

2)支援センターおよび自治体の担当者が、具体的な実践知をもち支援の質が向上する
「支援センター活動のコツ(効果的援助要素)チェックリスト」の評点と、協働型評価を通じて、地域に不足している視点・資源(人材・実践知・資金等)を認識し、その不足を補うための情報交流や学びの機会を創出することを目的とした。これにより、支援センターとして必要な技術を蓄え、障害のある人たちが芸術文化活動(創造・鑑賞等)に参加することができる、その環境をつくることに貢献しようとしていると考える。

1)2) ともに、(ウ.のアンケート参照)
実際の活動への反映は、令和5年度の実践をまちたい。



イ 支援センター未設置の都道府県の事業所等に対する支援

■茨城県
準備室2年目となる本年は、新たに「相談支援」に取り組み、これをきっかけに地域の障害者福祉施設の展示の支援、茨城県近代美術館との協働に発展した。また、情報交換会およびシンポジウムを継続開催することで、福祉・文化・教育分野などの多彩な参加者計142人を迎え、支援センター設置に至る機運を高めることができた。

■群馬県
公募により準備室を設置、すべての連絡会議および研修に、県の担当者と準備室メンバーが参加し、支援センターの中間支援を学びながら、下半期よりワークショップや人材育成事業の3事業を実施した。広報や対象者の広がり、そして地域や分野横断型のネットワークの創出が大変充実したと実感する。令和5年度に正式に支援センターが設置されるが、本年の協働から3法人による協働運営体制となり、地域エリアおよび得意分野の相乗をねらう。全国的にも珍しい運営体制であるため、ここで生まれる成果を注視したい。



ウ 芸術文化活動に関するブロック研修の開催

1) ブロック研修
国が実施した旬のアンケート結果をもとに、支援センターの今の役割を検証する研修(第1回)、行政の担当者が自分ごととして取り組みかつ関心をもってもらえるテーマとして「評価」をキーワードにした研修(第2回・5回)、「相談支援」と「文化施設等との連携」をテーマにした研修(第3回)、各県の支援センターならびに準備室担当者が支援センターの認知向上ならびに中間支援としての役割や価値を社会発信するための研究発表会(第4回)を実施し、次のような学びの声がうまれた。

【アンケート(抜粋)】
■第1回
・ 支援センター職員:「相談」ができる場所だという周知がどれだけ広くできるかが重要になると思います。宮城県の事例にありましたが、相談支援員の研修会や関係機関に支援センターのチラシ等を配布できるよう働きかけたいです。
・ 支援センター職員:「つなげていく」方が事業が豊かになっていくことを学びました。何につけても自分たちで開催しなくては、相談も完結させなくてはと思っていたけれど、そういう風にしていけると広がりもできより豊かに楽しくできるのはいいな、とお話を聞きながら思いました。

■第2回・第5回
・ 自治体職員:皆さんにとっては今更でしょうが、支援センターの評価軸が多岐にわたっていること。文化振興セクションとの連携をすすめていきたい。
・ 自治体職員:支援センターと共同で評価をすることの必要性を実感しました。他県の事例を参考に、できるところから進めていきたいと思います。
・ 支援センター職員:評価についての説明や他の県の話を聞いた後に、県の担当者と話ができてよかったです。改めて理解した上でどういうことができそうか意見を出し合えました。

■第3回
・ 自治体職員:(もっとも大きかった学びの視点は)支援体制ネットワークや支援資源の視える化等を充実していくことで、初めての相談者に対してニーズに合った支援ができること等が支援センターの力量として試されること。
・ 支援センター職員:(もっとも大きかった学びの視点は)相談対応の幅を拡げるには、ネットワークを作り、支援センター側が相談できる先の機関を作ること。

■第4回
・ 自治体職員:他県での取組事例や講師の方々によるテーマの深掘りによる意見交換はリアルでしか味わえない熱量などを味わうことができ、大変貴重な機会となった。
・ 支援センター職員:まだまだ障害福祉課しか接点がないので、文化課、生涯学習課などにもヒアリングからはじめてみたいと思います。また、「中間支援」がまだまだ出来ていないので、少しずつネットワークを広げながら、県内各地に任せられる人たちを見つけていかなければと感じております。
・ 支援センター準備室:「生涯学」と出会わせていただき感謝です。考えを述べる機会もいただき、実りある時間を過ごさせていただきました。


2)ダンスワークショップ
ワークショップ終了4ヶ月後に振り返りの会を実施し、ワークショップがどのように活動にフィードバックされているかを確認しあった。宮城県ではあるダンサー(兼振付家)が福祉施設を巡回する活動にワークショップでの体験や手法が生かされていることが報告された。また、ワークショップ参加者の複数が、このプログラムに同行しともに活動していることが明らかになった。山形県では、鶴岡市で子育て支援をベースにしながら障害児者支援に取り組むNPOと、ダンサー兼コーディネータが連携して舞踊のワークショップを継続実施していることが明らかになった。身体障害、精神障害の人などが主体的に参加し、活動の継続のために自ら助成申請を行うなど自立した活動を確認することができた。

【アンケート(抜粋)】
・ 以前、響さんの公演を鑑賞させて頂きました。とても心に残ったので、今回は自分も参加して身体で感じたいと思いました。
・ とても参加しやすい雰囲気でした。言葉よりも身体の方がより自分自身の心の奥底にある本当の気持ちが表現できると感じました。
・ 支援する側、される側の関係でなく、ダンスを通して、今、ここを一緒に作り上げる楽しさとお一人お一人の表現の美しさに心打たれました。講師のリードがとても自然にその人らしさを引き出していらっしゃって感動しました。”すべてを肯定する”とても大切なことを教えていただきました。


3)その他の成果
・福島県の支援センター運営団体である「はじまりの美術館」を通じて、福島県博物館連絡協議会における[障害者等に対する合理的配慮に関する研修]の相談があった。そこで弊法人が取り組むミュージアム・アクセス事業(文化庁委託)と連携し、博物館連絡協議会に加入する美術館・博物館の職員と学びの時間をもつことができた。なお、福島県在住の障害当事者が話題提供者となり講座をすすめるにあたり、福島県障がい福祉課の職員(支援センター窓口)であり視覚障害のある人、福島県立特別支援学校の教員であり聴覚障害のある人を話題提供者として招くことができた。具体的に、地域に住む障害のある専門家と「合理的配慮とはなにか」のスタートラインにつけたこと、またここから地域の支援センターと連携して、障害のある人の文化活動・施設への参加・体験の環境形成に着手できた。



エ ブロック内の連携の推進
当該広域センターは、担当者1−2名体制の小さな支援センターが多く、ロールモデルが得にくい、仕事へのプライドや意欲の維持に課題があると感じてきた。そこで、ブロック連絡会議や研修を通じて、支援センター職員間の関係性が深まること、また課題や知恵を分かち合うことにより、本業務の支援スキルの質の向上や意欲向上につながることを目指したが、それを日々の発言やアンケートにて確認できた。
【アンケート(抜粋)】
・ 支援センター準備室:各県の特色あふれる活動に驚きと、こんなに素晴らしい眼差しが当事者へ向かっている現実に感謝の気持ちでいっぱいになりました。
・ 支援センター職員:それぞれのセンターで同じような悩みを持っていることを共有できたことがよかったです。また、すぐに解決できない相談でも、どうやったらできるか一緒に考えていく姿勢はセンターに必要だと感じました。



オ 発表の機会の確保
・群馬県のワークショップは、障害の有無に関わらず350人の参加者を得た。メディアにも大きく紹介され、令和5年度からの支援センター設置の機運醸成にもつながった。研修会の場においても、県内の団体に作品および活動紹介の場を開き、これまでネットワークとして認識していなかった個人や団体と連携することができた。
・当該広域センターの地域で活性化していない舞踊領域は、2年間にわたり舞台鑑賞から参加体験へと丁寧に活動を実施したことで、関心層の掘り起こしとネットワーク化が実現した。障害のある人たちの発表の機会のその手前にある、参加・体験の環境形成に資することができたと考える。

【アンケート(抜粋)】(ダンスワークショップ参加者)
・ ファシリテーターをやりながらコーディネーターをやるのは、とてもしんどい。手が回らず疲労で、やらなくなっていくので、企画相談の体制、入口が存在してるだけでとても助かります。 参加者を集めてくれるだけでもすごく助かります。
・ 充実した時間でした。今後の山形を盛り上げたいです。



カ 自治体における基本計画策定の推進
群馬県は、令和5年度から障害政策課と文化振興課が連携して策定に入る。
仙台市(政令指定都市)は令和5年度中の完成を目指して進行中。



キ 事業評価及び成果報告のとりまとめ
事業の実施により直接的に得る定量的データ目標(実施計画書記載)
⇒結果(達成率)は次の通り。
■ブロック連絡会議と評価:支援センター職員・自治体職員・テーマに関連した関係者等20人×5回=のべ100人⇒結果:5回91人(91%)
■ブロック研修会:支援センター職員・自治体職員・テーマに関連した関係者等20人×5回=のべ100人⇒結果:5回91人(91%)
■支援センター未設置県における関連企画:障害のある人・自治体職員・テーマに関連した関係者等80人×1種×2地域⇒結果:茨城2種・296人(1種当・平均185%)、群馬3種・744人(1種当・平均310%)
■舞踊に関するまなびの場の創出(ワークショップの実施と参加、検証):障害のある人・支援センター職員・自治体職員・テーマに関連した関係者等20人×2種×2地域=80人⇒結果:宮城2種・48人(1種当・平均120%)、山形1種15人(75%)

実施計画に記載している成果目標として再掲出
【事業の実施により終了後(中長期的)に得たい成果/アウトカム目標】

①参加者個々人の行動・意識・態度・理解・関心・スキル・生活状況への波及および関係者や組織の在り方・運営の仕方・関係性への波及
・ 障害者が、芸術文化活動を通じて、健康で生きがいのある生活を追求することができ、自らの個性や得意分野を生かして参加できる社会となる
・ 障害者の芸術文化を支える人材と機関が増え、また活動が持続する
・ 障害のあるなしに関わらず多様な人が生きやすい共生社会が実現する

②社会全体の意識・関心・社会の仕組み・社会状況への波及
・ 障害者の芸術文化活動に関する基本計画が策定され、必要な仕組みと予算が整えられる
・ 障害者の芸術文化活動を支える行政と市民の協働が促進され、不足する人的・金銭的課題は市民による自律的な力により支えられる

事業の課題

ア 都道府県の支援センターに対する支援
・広域センターの活動が2年目となり、研修の参加頻度や参加意識にグラデーション*がでていた。県域の支援センターと自治体に支持される、魅力的な研修を提供できるように努力したい。
*支援センター職員は概ね全5回に参加。自治体職員は、協働型評価(全2回)を必須としたが、1回も参加できない県もあった。

【アンケート(抜粋)】
・支援センター職員:支援センターの地域格差は予算、人員、団体の力量等でかなり差があるのではと感じています。それをフラットにすることは難しいですし、マニュアル問題と同様に画一化せず、個性的に色が出ていくことが個人的に望ましいと思いますが、ある程度のラインを揃える必要性はあるのかなと考えたりしました。


イ 支援センター未設置の都道府県の事業所等に対する支援
■茨城県
・令和5年は、茨城県が決定した方法で支援センターがたちあがるという。準備室は、令和3年度に茨城県と協議し活動してきたため、この関係者と新・支援センターと茨城県との話し合いが必要と考える。

■群馬県
・成果に述べた3法人の協働機構体制を円滑に運営するためには、一方で、協働のための規定づくりも必要になると考える。これは、審査会でも述べさせていただいたため、県の伴走支援に期待したい。


ウ 芸術文化活動に関するブロック研修の開催
当該広域センターは、コロナ禍の期間に開設されたため、おのずとブロック連絡会議ならびに研修はオンラインで開催してきた。しかし、今後は、対面で学びあえる機会を創出することが必要であるが、1.物理的エリアが広いため、旅費交通費の支出が大きい、2.講師を担当しない限り、広域センターから旅費を支給できない、3.予算規模が小さい支援センター(500万未満の支援センターが3県)には過度な負担になる。
令和5年度は、ひとつの解決方法として、互いが講師になる「出稽古」を実施するが、この手法の意義と予算の効果的活用の成果を見極めたい。


エ ブロック内の連携の推進
各地域の支援センターと自治体担当者が、日常的な情報共有、相互理解が足りていないように感じる。どちらも本事業の主体者であるという自覚や認識を伝えていくことを試みたい。


オ 発表の機会の確保
「鑑賞・参加」の領域に拡大した視野を持つ必要性があったが、令和5年度の事業内容が「芸術文化活動(鑑賞・創造・発表等)に参加する機会の確保」に変更されたため、とくにまだ活動が充実していない「鑑賞」領域への着手は次年度以降の課題である。


カ 自治体における基本計画策定の推進
茨城県の状況は確認が必要。


キ 事業評価及び成果報告のとりまとめ
・障害者芸術文化活動普及支援事業における広域センターの評価については、広域センター間で評価指標を定め定点観測できると良いと考える。
・客観的な成果をはかるためには、厚生労働省令和2年度障害者総合福祉推進事業「全国の障害者による文化芸術活動の実態把握に資する基礎調査」(令和3年3月株式会社ニッセイ基礎研究所)のような、大規模調査に期待したい*。
*この調査は、障害当事者の回答数が極端に少ない、回答している障害種の偏りがある、調査の実施の期間も短い、支援センターに協力依頼がきてから締め切りまでがさらに極端に短い、などの課題があった。また、設問そのものが難しく、知的障害、発達障害、精神障害の人たちの声を反映できるアンケート内容および調査手法の改善があるほうが良い。広域センターとしても、全国連携事務局および厚生労働省に提案していく。

実施計画に記載している成果目標として再掲出
【全体を通じた達成度の測定について】
厚生労働省令和2年度障害者総合福祉推進事業「全国の障害者による文化芸術活動の実態把握に資する基礎調査」(令和3年3月株式会社ニッセイ基礎研究所)で浮き彫りとなった課題やポイントが改善し、障害のある人や社会にとって必要とされる支援センターになること。
*一例の紹介
●障害者による文化芸術活動を推進するための課題
「障害者による文化芸術活動に関する支援や情報が障害者本人に十分届いていないこと」59.3%、「障害者による文化芸術活動の実施現場における物理的・心理的な障壁があること」40.2%、「障害者による文化芸術活動が障害福祉サービス等の報酬や工賃に反映されないこと」40.2%
●文化芸術活動を実施する際に協力してもらう機関(事業所の回答)
「障害者芸術文化活動支援センター・広域センター・連携事務局」3.8%、協力してもらう機関はない」20.4%、「障害当事者団体・福祉関係者」22.6%、「行政の福祉課」27.5%(参考:「ボランティア」35.4%、「文化施設(美術館、博物館、劇場、ホール等)18.6%、「文化 団体・文化関係者」14.9%」
注:支援センターおよび文化施設等の認知度が極めて低い
●外部の機関からの支援や協力
・「現在受けている支援や協力」では「該当するものはない」43.0%で最も多く、「発表(公演・展示)環境に関する相談や情報提供」24.4%、「鑑賞に関する相談や情報提供」24.3%、「文化芸術活動に関する専門家やプロのアーティストからの指導や助言」18.7%。
・「今後(も)受けたい支援や協力」では、「鑑賞に関する相談や情報提供」41.4%で最も多く、「文化芸術活動に関する専門家やプロのアーティストからの指導や助言」39.2%、「発表(公演・展示)環境に関する相談や情報提供」39.0%

■その他の課題
・令和4年から、東北地方における文化関係者のネットワーク化をめざし、「Tohoku Creative Meeting」という会がたちあがり、東北6県の文化芸術関係者が情報交流している。同じく令和4年から、弊団体では、障害者の生涯学習事業(文科省委託)により「共生社会づくりコンファレンス東北ブロック」を担当している。文化領域・社会教育領域の活動圏域は、「東北6県」だが、当該事業の圏域は「南東北・北関東6県」で、重なる県と重ならない県があり、情報共有や連携推進のなかでもどかしさが常につきまとう。

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