終了・報告

インテグレイテッド・ダンス・カンパニー響-Kyo仙台公演 トーク報告

開催日
2021年12月02日(木)
時間
本公演での幕間でトークを行った
場所
仙台銀行ホール イズミティ21(仙台市泉文化創造センター) 小ホール
話し手
伊地知裕子さん(インテグレイテッド・ダンス・カンパニー響-Kyo プロデューサー)
聞き手
大河原芙由子さん(PLAY ART!せんだい 共同代表)

大河原芙由子(以下[大河原]) 本日はよろしくお願いします。伊地知さんに色々お話を伺っていきたいと思います。まず皆さんにも観ていただいた作品の話からしていきたいと思います。
(「カタン・カタン」の)冒頭から、車椅子の方の車輪をこう、押す動きをダンサーの方も一緒にシンクロしてやるような表現で、本当に映像も音楽もある楽しい舞台でした。
私はゲネプロも観させていただいて2回目の観劇だったのですが、最後はすごく心温まる、本当に大切な人と一緒に踊りたくなるような作品でした。まず、この作品については宮沢賢治の原作ということですが、その意図は。


伊地知裕子(以下[伊地知]) 宮沢賢治の原作で童話です。「シグナルとシグナレス」という原作があって、それを踊る童話シリーズという風に称して、スズキ拓朗さんという振付家の方に私どものダンスカンパニーの為に振り付けをしていただいたという、そういう作品です。
スズキさん、拓朗さんは非常に才能のある人で、とても楽しくユーモアもあって、特にこれなんかは切なくロマンチックっていう作品だなという風に思っております。

じゃあうちでちょっとやってみようかなという風に思って立ち上げた

大河原 ありがとうございます。では、今日は『響ーKyo』というダンスカンパニーについてもお伺いしたいですが、2014年に立ち上げられたということですが、立ち上げに至った経緯、伊地知さんの思いとしてはどういったものがあったのでしょうか。


伊地知 私どもは、障害のある人とない人が一緒に創造活動をするというのを、非常に古くから、1991年からやっております。
一緒に創造活動をやることでどういう新しいアートの可能性があるかを探求するということで、色んな創造的な音楽、ダンス、美術、そういったものをワークショップという形でずっと展開してきていて、海外からもいろんなアーティストさんをお招きして色んなワークショップをやってきています。
ご存知かもしれませんが、ヴォルフガングシュタンゲさんとかアダム・ベンジャミンさんとか、いろんな方々をお招きして、どういう風に障害を持っている人たちとのアート活動っていうのができるのかっていうことをいろいろ展開してきていました。
その中で指導者育成コースをやったりしていますが、2014年辺りからそういったワークショップをやることでどういう作品、どういうプロダクトができるのかということもやっぱり見せていく必要があるのではないかということで、立ち上げたのが、ダンスの方ではこのカンパニーです。
モデルとなるのはイギリスでカンドゥーコダンスカンパニー、We Can Doダンスカンパニーを略してカンドゥーコといいますが、そういうカンパニーがあって、日本の中でもそういった活動をできないだろうかと。
実は1999年にそのカンドゥーコダンスカンパニーを、日本に招聘した経緯があるのですが、私はそのダンスカンパニーを立ち上げるつもりはなくて、日本で何箇所か公演して、どこかがこういうことを立ち上げてくれるだろうなという風に思っていたのですが、どこも立ち上げなかったので、じゃあうちでちょっとやってみようかなという風に思って立ち上げたのが2014年です。

そこにはまたこういった舞台のダンスとは異なる生きたダンスというか、もう1つのダンスがあるなという風には思っております

大河原 実は私たち『PLAYART!せんだい』という団体も2019年に立ち上げたのですけれども、スコットランドのトリッキーハットというカンパニーが50歳以上の方たちと演劇作品を作っていて、日本で誰か一緒にやりませんか、というので来ていて、どこも手を挙げなかったのです。
それで、「やりたいです」と言って(PLAYART!せんだいを)立ち上げたところがあったので、立ち上がり方が似ているなと思ってしまったのですが、響-Kyoというカンパニーは今何人ぐらいダンサーさんがいて、どういう構成になっているのでしょうか?


伊地知 10人ぐらいダンスカンパニーのメンバーがいるのですが、今車椅子のメンバーが3人、身体障害というか麻痺が残っている方が1名、あとは障害がないダンサーです。
活動としてはこういった作品を作る活動もあるのですが、もう少し地道に車椅子の人とどういった動きのフレーズを作っていけるかというようなこととか、テクニックの練習とかでカンパニークラスをやっています。それからそのほかに、私どもはもう少しコミュニティーダンスをベースとした形で、知的障害の方、身体障害の方、盲の方、聾の方、そういった方々も含めて一緒にダンスをしましょうというワークショップのシリーズで、響-Kyoと踊ろうというダンスワークショップを月に1回やっています。

そういった活動も実践をしていて、舞台っていうのはこうやって振付けをして、いわゆる振りが決まっている、つまり再現性のあるダンスですが、その響-Kyoと踊ろうとかというダンスワークショップというのは即興でダンスを作っていくわけです。

私は対話のダンスという風に言っていて、そこで出会った人たちと心を通わせながらいろんなダンスをやるのですが、そこにはまたこういった舞台のダンスとは異なる生きたダンスというか、もう1つのダンスがあるなという風には思っております。そういう活動を色々やっています。

いいねと思う人に参加してもらい、いろんな方法で参加してもらう

大河原 なるほど。今日メンバーの方というのは公募で応募しているということだったのですが、そういった、ワークショップの場の中からダンサーになりたいという方もいらっしゃるのですか?


伊地知 そうですね。最初に立ち上げたときはオーディションをやりました。こういったダンスカンパニーを立ち上げるのだけれど、参加したい人たちはどうぞ来てください、ということで。そういったオーディションを2日か3日ぐらいに分けてやって、その中から選んでカンパニーを立ち上げました。
その後も必要に応じてオーディションをやったり、それから興味があるという人たちにはカンパニークラスというところに来てもらって一緒にやって、やっていけそう、という方々にはそのまま入っていただいたりとか。「響-Kyoと踊ろう」のワークショップに来ている人で、いいねと思う人に参加してもらい、いろんな方法で参加してもらうようにしています。

ダンサー達と一緒に出かけていってワークショップをやる。とにかくいろんな場所にいろんな活動を作っていく

大河原  私たちは先程申し上げたように、50歳以上の方々との演劇活動でやっています。参加者の方は俳優じゃないアマチュアの方で、演技をしないでくださいっていうことと、上手くならなくてもいいっていうようなことでやっています。ただもちろん、一緒に作るのはプロの演出家と作品を立ち上げていくということをやるのですが。
今日見せていただいた作品っていうのは本当に、プロフェッショナルで、技を磨いていくというかそういったことを日々やられているのだと思うのですが。先ほど、日々稽古でいろんなことを研究しているっておっしゃっていましたが、具体的にどういった稽古をされているのでしょうか?


伊地知 このカンパニーでやっているカンパニークラスでは、いろんなコンテンポラリーダンスのテクニックをお互いに学ぶということもやりますし、私たちがいいなと思う振付家をお招きしてワークショップをやってもらうこともあります。
それから、自分たちだけで車椅子の人とどういった動きのフレーズを作っていけるかっていうような、いろんな動きのリサーチですね。そういう風なことをいろいろやっています。


大河原 車椅子の方がいらっしゃって、一緒にリサーチをやることで新しい身体の発見というか、障害がある方、ない方、お互いの身体を発見していくというか、そういったことも現場で生まれているのですね。

伊地知 そうですね。そういうことを振付家の方に提案をしています。


大河原 仙台だと、まだまだこういった多様な身体の舞台作品っていうのを、まず観る機会が少ないかなって思います。今日、(会場にいる)みなさんが観る機会があったので、今度は参加してみたいって思われる方もたくさんいらっしゃるのではないかなと思うのですが。
今日のゲネプロリハーサル(見学会)の時に、福祉事業所の方ですとか、100人ぐらいの方がこの作品を見られたのですけども、そういった方たちが自分も身体を動かしてみたいといったときに、どう活動を開いていけるか。伊地知さんたちも私たちも課題なのかなと思うんですが。


伊地知 そうですね。やっぱり、例えば私達の場合は、出前ワークショップというのをやっていて、そういった施設で身体活動をやってみたいとかというところがあれば、そこにダンサー達と一緒に出かけていってワークショップをやるという風なこともやります。それから、『響-Kyoと踊ろう』という、一般公募して、じゃあここに来てくださいね、一緒にやりましょうということもやります。
ただ、やっぱり知的障害のある方々の場合は二重三重にバリアがあるというか、来たいと思っても一人で来られないという風なこととか、まずその情報を得られないという風なことですとか、いろんなことがあります。
本当は養護学校だったり特別支援学校だったりとか、そういった施設に行って、こういった活動がありますよといった風なことを紹介していくという風なこともすごく必要かなと。とにかくいろんな場所にいろんな活動を作っていくっていうのが最初かなと思います。


大河原 そうですね。伊地知さんたちも最初はまず作品作りではなくてワークショップをたくさん、とにかくやられていたということなのですね。そういった活動を、どんどん機会を増やしていけたらなと思います。


伊地知 そうですね。なかなか、リハーサルっていうのも三十何回とかやりますし、時間もいろいろとかかるので、なかなか思うようにはいってないのですが。
できるだけいろんな方々とダンス活動をやっていきたいなと思います。

大河原 今回のこの作品というのは仙台以外でも公演はされたのですか?


伊地知 横浜で1回やっておりまして、もし興味持っていただけるところがあれば、私どもはどこでも伺わせていただきますので。

本当は離島のほうでやる予定だったのですが、コロナで行けなくなって、同時配信という形で島の方に作品を届けるという形でやっていまして。コロナの影響は非常に大変です。

大河原 そうですね、舞台業界はほんとに大変ですが、今日こうして来ていただいて、みなさんと一緒に作品を見られてほんとに良かったなと思います。

伊地知 ほんとにお招きいただいてありがたいなと思っております。


大河原 それでは、あっという間に時間が過ぎてしまって、もう1作品、皆さんに見ていただくということですが、次の作品についてご紹介お願いします。


伊地知 次の作品は、今の作品とは違って、とても緻密に振りつけられたコンテンポラリーダンスです。お楽しみいただければと思います。


大河原 本当は会場からの質問もいただきたいところではありますが、一方的なトークとなってしまいました。伊地知さん本当にありがとうございました。


以上

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