終了・報告

《 SHIRO Atelier&Studio2021 》報告レポート「アトリエつくるて」第5回

開催日
2022年01月22日(土)
時間
14:00-17:00
場所
日立システムズホール仙台 アトリエ
ファシリテーター
佐竹真紀子さん、庄司こずえさん
参加人数
参加者10名、付き添い3名、ケアワーカー2名、スタッフ2名 合計19名
概  要
1.プログラムの説明(10分)
2.つくる時間(120分)
3.作品をみる時間(30分)

「アトリエつくるて」は障害のある人とない人が、ともに表現することができるアトリエです。仙台市の文化施設を活用した定期的な事業として、昨年度から継続的に開催されています。まず、『1.つくる時間』では、思い思いの材料を選び、自由に作品を創りあげます。その際に、ファシリテーターがアドバイスや画材の提案など、創作のお手伝いをいたします。そして、『2.作品を見る時間』では、のんびりお菓子を食べながら互いの作品をじっくりと見て、全体で感想や振り返りを共有します。 (今回は感染対策のため、茶話会を中止いたしました)

今年度第5回目の「アトリエつくるて」の様子を振り返ります。

この日は、大寒を迎えたばかりで冷え込みましたが、新年のアトリ会場は一段と暖かく感じられました。



ある女の子の作品は、数字チョコ、ショートケーキ、あんこもちなどデザートづくしです。小さなお菓子屋さんで作られるショートケーキは、三角形のスポンジと赤々とした苺、そして生クリームがたっぷりトッピングされています。
その女の子のお姉さんは、まるでグミが降ってきたように見える雪景色や、光の波長のように波打っている虹を描いていました。見えている世界が輝いていて、一日だけ眼を借りてみたいと思ってしまいます。



真ん中のテーブルでは、乗り物へのロマンが追求されていました。
一人の男性は、長町の市電と塩釜のバスを描いていました。市電が仙台に走っていたのは1976年までだったそうで、今は保存館でその面影を見ることができます。定規を使わないフリーハンドの線が、記憶の中の市電を浮かび上がらせていました。
その向かいでは、仙山線を走っていた蒸気機関車が紙粘土で表現されていきます。蒸気機関車の車輪はくるみボタンのようにかわいらしく、その車体は石炭のように真っ黒に染められています。創作している姿は、まるでパン生地をこねるようなたくましさと温もりがあります。


ある男性は、チラシを見ながらケーキやシュークリームをデフォルメして、宝石のような夜景の中に並べていきます。初めてポスカを使ったそうですが、特徴的な薄い色を重ね塗りするようにして使いこなしていらっしゃいました。
そのお隣には、紫の大きな花が咲いていました。モデルの花があるのではなく、自分の花のイメージをそのまま絵に落とし込んでいるそうです。「太陽の光を描いたけど、海の中みたい」とおっしゃるとおり、描きこまれた葉脈がまるで水面の網模様が揺らいでいるように見えます。



ある女性は、ドールハウスをもう一度組み立て直していました。分解してみると細部までこだわって作られているのがよく分かります。ネッグウォーマーを編んでいたり、仏様の絵を描いていたり、その作品の幅広さにはいつも驚かされます。
その向かいの方は、関ケ原の合戦場の絵を半立体の作品として完成させていらっしゃいました。こだわったのは空模様だそうで、燃えるような空が目に焼き付きます。新たに横浜の山下公園も描き始め、ランドタワーの光の表現に工夫を凝らしていらっしゃいました。





いつもの道具を忘れたことで、絵の具を使って濃淡や筆の形を生かした表現に挑戦している方もいらっしゃいました。額のように文字を線で囲んでみたり、模様の上に直接文字を描きこんだり、ハプニングも遊びながら楽しんでいるように見えました。
ある女性は、北風などの自然物をモチーフにした明るい気持ちになれる模様を、一面に敷き詰めていました。また、普段使用しているスケッチブックには涙を流す虎の顔が画面いっぱいに描かれていました。題名は「葛藤」で、助けを求めてもいいのだということを語りかけられているように感じます。プライドと弱さの矛盾が、葛藤を生み出しているのかもしれません。



今年度の開催は最後ということで、振り返りの時間に、ファシリテーターのお二人とボランティアの方からご感想をいただきました。大変な状況が続きますが、あらゆる人が集まって表現できる場所が存続されることを切に願っております。



レポート執筆者 櫻井香澄

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