じょうほうスウプ

芸術活動はどうしていいかわからない、だから大切

特定非営利活動法人生活支援

きょうどう舎 しじゅうからat work

訪問日
2016年11月28日(月)
所在地
宮城県仙台市宮城野区

リーマンショックによって内職仕事が激減したことをきっかけに、絵画活動をスタートしたきょうどう舎。
クリニカルアートとの出会いによって、利用者が自分なりの表現方法を身につけた。生活ホームを運営する法人の特性を生かし、日常の中の表現の営みに丁寧に向き合う。「自分で決める力を引き出す機会」として表現活動に取り組む。

JR東仙台駅から徒歩10分程度、マンション一階のフロアにある指定多機能型事業所(生活介護・就労継続支援B型)。朝のラジオ体操に始まり、ウォーキング、午後から箱折や封かんなどの軽作業を行いますが、その活動と並行してゆるやかに壁を仕切り、20人ほどの利用者が画材と画用紙を前におもいおもいに絵を描いていました。

「美術活動のきっかけは、実はリーマンショックです」と施設長の中村さん。内職仕事が激減し、何もやることがない、という現実から机の上でできることとして絵画活動がスタートしました。一方、その支援方法にすぐに行き詰まったときに、職員が家族介護の中で「クリ二カルアート」といわれる活動に出会い、以来、講師を招き、学校の授業以来、初めて絵を描く人たちに、貼り絵や色彩分割などの見通しのつく表現方法を伝え、ゆっくりと自分なりの方法で表現する様子を見守ってきたそうです。

「内職と創作活動に意義のちがいを感じますか」と尋ねると、「内職作業があることは、わかりやすさ、数がみえるうえで大切です。一方、逆に絵を描くことはどうしていいかわからない、自由でいいということで難しい。しかし、だからこそ、自分で決めるという、もともとある力を引きだす機会をつくること、そして自由でいいということを確認することもまた必要で、それが大切であると今では考えています」と中村さんは応えてくれました。

作品は、友人と行った東京旅行の思い出である東京タワーやパフェ、生まれた秋田の風景や田沢湖の竜子姫像、旅行先の八幡平や紅葉の風景、大好きな電車などが描かれています。それぞれが自分なりのモチーフを持っており、これらは芸術活動が個人の自由を保障するというアトリエ全体の理解のうえに成り立っていると感じました。また紙で創作されたバッグ、紙粘土からつくられたお面など立体の作品にも眼がとまりました。一部の作品はグループホームの居室の中で生み出されているものだということでした。この法人が、もともと生活ホームを運営する目的で生まれ、利用者の生活支援をベースとしていること、そうした日常の表現の営みにも丁寧に向きあっている様子を感じることができました。

訪問したとき、しじゅうからat workでは初めてのグループ展「きょうどう舎それいろ展」(2016年12月1日~5日/ギャラリーチフリグリ・宮城野原)の準備をしていました。きっかけはArt to You! 東北障がい者芸術公募展で、入選者の作品をみに行ったときのこと。「普段は、ほかの人をほめること、共感が少ない利用者同士が、展示会をみて圧倒されたときに、すごいなあと感心したのです。他者を認める、そのような機会をつくる必要性もあると考え、全員で展示会をすることにしました」と再び中村さん。みせていただいたオリジナルカレンダーも全員の作品が掲載され、また入選率7%という全国障害者アート公募展「みんな北斎」にも2名が入選し、これからの活動が楽しみなアトリエです。

(文:柴崎由美子)

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