じょうほうスウプ

動物博士の描くイラストレーション

大友浩一郎さん

訪問日
2017年1月6日(金)
所在地
宮城県岩沼市

写真を見るだけで、動物の種類、名前が即座にわかるという動物博士・大友さんは、グリム童話のワンシーンを描いたことから作品制作の楽しさに目覚めたという。
これまでの制作をはじめ、作品の商品化やオンライン上で作品展示の誘いをうけたことや、今後自分の作品を仕事につなげる方法を模索していることまで含めて、話を聞いた。

哺乳類、猛獣をはじめ、広く動物に関するイラストレーションの制作に取り組んでいる大友さん。写真を見るだけで何の種類のどういった動物か、即座にわかるという動物博士の面を生かし、作品制作に取り組んでいます。幼い頃、好きなグリム童話「オオカミと七匹の子ヤギ」のワンシーンを描き、再現したことがきっかけで、作品制作の楽しさに目覚めたそうです。また5歳のとき、ディズニー映画『ロビン・フッド』のキツネをしっぽの先から描き始めたのに全体がバランスよく完成したことを覚えている、と大友さんのお母さんはおしえてくれました。ご飯を食べながらも、箸の先で描く絵の構図をなぞるのが小さいころからのクセだとか。

幼稚園のころはミュージカル『ライオンキング』のセリフを全部暗記するほど。ハイエナのぬいぐるみをほしがっていたそうです。小学生のころ、絵画教室に短い期間通いましたが、描いている絵のトーンやタッチなどはあまり変わらず、小学一年生のときは、自由帳を毎日一冊使うほど絵を描き続けました。中学三年生のときに、家の壁に壁画を描いてほしいとご両親が伝えたところ、白ペンキを塗った上から直接マジックで動物の絵を描きました。

また、中学生のときにはダンゴムシの研究を行いました。その研究結果が、岩沼市出身の電子技術者・只野文哉氏にちなんだ科学のコンテンストで受賞。写真ではなく、ダンゴムシの生態を写生した点が特に高く評価されたそうです。受賞がきっかけで河北新報から取材がきたともいいます。

マーカー系のペンや色鉛筆で描き、一つの作品を仕上げるのは数時間ほどですが、大学の卒業制作は構図を決める時間も含め、半年ほどかけて取り組みました。また、大学時代、動物園の学芸員資格を取得し、写生大会のボランティアに参加するなど、動物と関わりのある仕事に就きたいという気持ちも強くあります。研修期間中に、動物園からモルモットの個体表を描いてほしいと頼まれたことも。大友さんは自分のことを「突き詰めてしまうタイプ」と分析します。

2015年3月に美術大学を卒業し、いまは名取市の障がい者就労移行支援事業所株式会社スプリントに通っています。作品制作は自宅とスプリント、両方で行っています。スプリントでは自習の時間に描いており、その時間は長くて5時間ほど。特に作品制作に関して指導を受けることはありませんが、作品を商品化してみては、とスタッフからアドバイスをうけるといいます。

大友さんはオンラインのイラストコミュニケーションサービスpixivに登録しており、これがきっかけで東京の画廊主から作品展示の誘いをうけたことがありますが、大学のゼミ展とスケジュールが重なっており、出展を諦めたことがありました。機会があれば応募したいという気持ちは強く、展示に関する情報をインターネットで探しています。「今年はエイブルアート・カンパニーの募集がなかったので残念でしたが、動物をテーマにした作家さんが結構多いので驚きました」。

お母さんはこのような大友さんの活動が仕事につながるのか、心配だといいます。ある大学の研究者から、大友さんの絵を使いたいという申し出がありましたが、権利関係などで話が頓挫してしまったことがあったからです。大友さんは現在、自宅でバッジの制作もしており、自分の作品を仕事につなげる方法を模索しています。

(文:高橋創一)

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