じょうほうスウプ

季節や自然を感じる、大きな絵に挑戦したい

奏さん

訪問日
2017年1月11日(水)
所在地
宮城県仙台市青葉区

指定就労支援事業所で働き、その後に別の就労継続支援A型施設でも働いた後、現在は自身のペースにあわせて絵画、イラストを自宅で制作。
子ども、花、季節を感じるものを主なモチーフにし、色鉛筆と鉛筆とパステル絵の具を画材としている。公募展への応募をしたことや、イラストレーションの仕事の可能性についてなど、さまざまな角度から制作について伺った。

絵画、イラストを自宅で制作している奏さん。9年前に大学を中退し、発病後、作業所に通う中でイラストを描き始めたそうです。就職のため作業所を離れることになり、作業所の友達4人ほどにあてて手紙代わりに描いたものが最初だったといいます。下絵を鉛筆で描いて、アクリル絵の具を用いました。「水彩絵の具だと混ぜなければいけないですけど、アクリル絵の具は色彩がいっぱいあるので。結局私は就職しなかったのですが、それがきっかけで描くようになってよかったです」。

もともと中学校で美術愛好会に参加し、4年生大学ではプロダクトデザインを専攻、予備校時代にデッサンを習っていましたが、自分の思っているものを描くのは友達への絵手紙が最初だったそうです。

絵は気持ちがゆっくりしているときであれば取り組めるため、自身のペースにあわせて活動しています。NPO法人グループゆうが立ち上げた指定就労支援事業所「ワークスペース歩°歩°(ぽぽ)」に通い、その後就労継続支援A型「プチエクレア」で働き、現在は作家活動に力を入れています。現在も歩°歩°とのおつきあいがあり、毎月バースデーカードを作成し、渡しています。

絵を描く場所は自宅のさまざまな場所。好きな作家はいわさきちひろや『ぐりとぐら』(中川李枝子、山脇百合子)など。好きなモチーフは、子ども、お花、季節を感じるもの。以前にみた風景や図鑑を参照しながら描くことが多いそうです。「A4サイズだといっきに4時間くらいで描きます。つけたしたことはないと思います。スケッチブックにささっと描いて、鉛筆で下書きしてからペンを入れます。どこに何を描くのか、決めてから描き始めます」。

お話を伺った際には、制作順に作品がまとめられたファイルをみせていただきました。現在ファイルは二冊。色鉛筆と鉛筆とパステル絵の具を用い、画用紙に描くことが多かったそうですが、A4コピー用紙のほうが緊張しないで描けるため、いまはコピー用紙に描くことがメイン。大きな絵を描きたい気持ちも強くなっているといいます。

また、以前はクラシックバレエやピアノを習っていたことがあり、現在も毎日ピアノを弾いています。クラシックを弾くことが多く、ノルウェーの作曲家・グリーグの曲が好きだといいます。演奏をするときは、最初にハノンで指練習をしてから、好きな曲を疲れるまで弾くそうです。
作品は頼まれて描くこともあり、歩°歩°のお客さんから、お孫さんにお祝い袋をあげたいといわれて描いたものや、助産師さんから同僚の出産祝いとして頼まれたものなど。歩°歩°のラッピング用紙として頼まれた絵もあります。

Art to You! 東北障がい者芸術公募展への応募は、歩°歩°に貼ってあったポスターで知ったことがきっかけ。第1回のArt to You! への応募が初めての作品応募の経験でした。公募展には出展したいけれど、力を入れるといい絵にならない、という理由で今後については悩んでいますが、2016年に開催された全国障害者アート公募展「みんな北斎」では審査員特別賞を受賞、自分の絵をみている人がいて、とてもうれしく、感動したそうです。なお、作家名は第2回のArt to You! から使用しています。

テーマを決めてのイラストレーションの仕事はできそうですか、と尋ねると、「プレッシャーをうけやすいので、頼まれると緊張して硬い絵になるのが悩み。チャレンジしてみたいけど、うまくできるかわからないです。納期もある程度、1カ月、2週間くらい時間をいただければ。絵が描けても仕事につなげるのが難しいので、(エイブルアート・カンパニーの)登録作家になりたい。契約のことなどがわからないので、クライアントとのあいだに代理のスタッフが入って交渉してくれると助かります」と応えてくれました。

(文:高橋創一)

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