終了・報告

【レポート】SOUPの研修2025第1回「映像による表現を知ろう!SNSで発信してみよう!」

研修の概要

日時:2025年10月28日(火)15:00~17:00
会場:一般社団法人アート・インクルージョン(仙台市青葉区)+オンライン(zoom)
参加者:10人(会場7人、オンライン3人)
講師:
門脇篤(かどわき・あつし)さん/現代アーティスト、一般社団法人アート・インクルージョン代表理事、一般社団法人まちとアート研究所代表理事
せこ三平(さんぺい)さん/相互支援団体PSI仙台代表。俳優。現代アート、戯曲、映像作品など。
進行:NPO法人エイブル・アート・ジャパン

*広報ページはこちら
URL=https://soup.ableart.org/program/2025nen/soup_kensyu2025/1_1028/

はじめに

SOUPでは、障害のある人のさまざまな芸術文化活動の普及と支援に取り組んでいます。今回は、まだSOUPでもあまり取り上げたことのなかった映像による表現に着目し、研修会を開催しました。
また昨今、映像を用いてSNSを通じて気軽に発信することが増えています。実際にショート動画などを使って日常の出来事を発信している講師から、簡単に動画を作成する方法や発信するときの工夫について学びました。

私が映像をつくるまで

はじめに、講師の門脇篤さんから、アーティストとして映像をつくるに至った経緯についてお話しいただきました。

研修会場でスクリーンに資料を投影しながらマイクで話す講師の門脇さん
講師の門脇篤さん

20代のころ、勤めていた会社をやめて絵を描いていた門脇さん。現代アートとの出会いを通して、誰にも描けない絵画ではなく、誰でもできることをしよう!と思い至ったことから、2000年の半ばころより、誰かと一緒に作品をつくる「参加型アートプロジェクト」を日本各地ではじめます。例えば毛糸を用いたプロジェクトでは、宮城県の東鳴子温泉に流れる川に毛糸の橋をかけたり、仙台では定禅寺通のけやき並木にピンクの毛糸をかけて桜並木にしたり。そこにさまざまな人が集まるようになり、誰かといっしょになにかをやることに楽しさを感じ、「何かをつくる活動」から「場をつくる活動」へ変わっていったといいます。

zoom画面。仙台の街の歩道の一角で参加型のワークショップを開いている様子の写真。親子連れなどでにぎわっている。テロップ「何かを作る活動」から「場を作る活動へ」と書かれている。
仙台の街中でのワークショップの様子

集まる”人”に興味が出てきた門脇さんは、2010年に「コミュニティアート・チャンネル」という名前で、Ustream(ユーストリーム)によるリアルタイムの配信番組をスタート。この番組では、アートプロジェクトを通して出会った人たちに、「どうしてこの街に来たんですか?」などといった質問を投げかけて、いろいろな話を聞いていきました。この番組づくりを通して、知らない人や物事と関わることができ、知っている人とは新たな関わりが生まれる映像という表現の魅力に気づいていったそうです。

zoom画面。コミュニティアート・チャンネルのチャンネルのトップページが表示されている。門脇さんとインタビューを受ける人などが写っている。
コミュニティアート・チャンネル

この他にも、現在一番町の商店街にある就労継続支援B型事業所アート・インクルージョンの設立に先駆けて始まった「チャンネル・インクルージョン」や、2011年の東日本大震災をきっかけに、被災地から人びとの声を届ける映像制作、こども新聞などアナログでの発信にも取り組みました。
そうした活動を通して、宮城に住んでいるさまざまな人たちと出会い、交流が生まれます。気仙沼などに住んでいるインドネシアの人たちとの交流や、ときには被災地の人たちとただおしるこを食べるだけのカフェをひらくことなどを通して、「普通の人」による文化的な蓄積を目の当たりにしていったと言います。資料のスライドは、おしるこカフェの様子で、口からお餅をびよーんと伸ばしたおばあさんと、その様子に大笑いするおばあさんの写真などが投影され、その場を楽しむ様子が伝わってきました。

zoom画面。おしるこカフェの様子の写真には、口からお餅をびよーんと伸ばしたおばあさんと、その様子に大笑いするおばあさんが写っている
おしるこカフェの様子

Strangers in Sendai

次に、門脇さんが取り組むアートプロジェクト「Strangers in Sendai」について、プロジェクトに参加するせこ三平さんとともにお話しいただきました。

「Strangers in Sendai」は、仙台に住む外国籍の人や障害のある人、学校以外を選んだ子どもたちなど、少数者の立場に置かれた人たち自身が「監督」となって映像をつくる表現活動です。2021年度に、仙台の「ストレンジャー」を複数の監督で撮るという映像制作からスタートし、その成果発表の場として「ボーダレス映画祭」を開いて来ましたが、2022年度からは世界中から「ボーダレス」と「ストレンジャー」をテーマに応募のあった映像もいっしょに上映するようになりました。これらの取り組みから、さまざまな背景や文化を持つ人たちを、映像によってつないできたことがわかります。

zoom画面。見出しには2021年〜「Strangers in Sendai」映像を契機としたコミュニティアート、と書かれている。4人の監督の撮影風景の写真が紹介されている

今年度からこのプロジェクトに参加するせこさんは、もともと映像制作会社に勤めていたところ、頑張りすぎて具合が悪くなってしまったそうです。
2019年より、多様な表現者を応援したいと「PSI仙台(Peer Support Interaction Sendai)」を立ち上げます。団体名にある「ピアサポート」とは、「自ら障害や疾病の経験を持ち、その経験を活かしながら、他の障害や疾病のある障害者と気持ちを共有し、対等な立場でともに考え、活動していく」(※)という意味があります。

参加者のせこ三平さんがマイクで話す様子。せこさんは甚平を着用して頭にバンダナを巻いている。
せこ三平さん

映像とはしばらく距離を置いていましたが、昨年度、ピアサポートに関する助成事業を活用しながら、あらためてやりたかった映像制作に取り組むようになります。今年度は「Strangers in Sendai」に参加し「境界線」をテーマに制作している映像作品についてもお話しいただきました。

また、せこさんが映像制作をおすすめする理由として、スマホなどでも撮ることのできる手軽さや、言語化できないものを表現できることに優れているといった点をお話しいただきました。映像をつくりながら、カメラを通して自分を俯瞰して見ることができたことや、ピアは「仲間」という意味があるけれど、そこに閉じたくないと話すのも印象的でした。

明日からすぐできる!映像投稿

休憩後の後半は、手軽にできる映像投稿の方法について、アート・インクルージョンで日頃行っているSNSの投稿について門脇さんからお話しいただきました。

撮った映像をSNSに投稿するまでの流れとして、アート・インクルージョンでは、「編集無しでほぼそのまま投稿」「すこし編集して投稿」「けっこう編集して投稿」の3つのパターンを使い分けています。
一番手軽な「編集無しでほぼそのまま投稿」する場合でも、YouTubeに動画をアップロードする際に、「サウンドを追加」という機能でBGMをつけているとのこと。1分以内のショート動画であれば、YouTube上に無料で使える音源がたくさんあり、曲から動画を見に来る人もいるそうです。再生回数を伸ばしたいときは、人気の曲を選ぶのも一つの方法です。アート・インクルージョンの場合は、動画に映る人が好きなアーティストの曲や、絵を描いている動画であれば描いているモチーフから曲を選んでいることを教えていただきました。

zoom画面。ミッキーさんが書体を描くところを撮った動画をYouTubeに投稿するスクリーンショット画面が写っている
アート・インクルージョンのミッキーさんが書体を描くところを撮った動画をYouTubeに投稿する画面

また、アプリの使い方の工夫について、スマホではYouTubeアプリでタイトルなどを編集している時は、パソコンのように別画面でもうひとつYouTube画面を立ち上げるといったことができません。そこで、「YouTube Studio」というアプリを入れると、YouTube画面をもうひとつ立ち上げたような操作ができます。YouTube Studioで過去の投稿一覧を参照しながらYouTubeアプリでタイトルを編集するといった操作がしやすくなるとのことでした。
また「サムネイル」は非常に重要なのでしっかり作成することをお勧めしますが、ショート動画は動画の一場面から選ぶしかできません。見てみたいと思ってもらえる場面を慎重に選ぶことが大切だそうです。

ほかに「編集無しでほぼそのまま投稿」の事例として、アート・インクルージョンに通うカムイさんの様子を投稿した動画がありました。
荷物を運ぶ台車が大好きなカムイさん。台車を押しながらアート・インクルージョンを出発し、10分間、近所の商店街を好きなように歩いて、またアート・インクルージョンに戻ってくる……という一連の出来事をノーカットで撮った映像です。門脇さんは、台車の音と街のセッションのように聞こえてきたと言います。

zoom画面。カムイさんを撮った動画のサムネイル画像が表示されている。動画タイトルは「新緑の一番町」
台車を押して一番町を歩くカムイさんの動画「新緑の一番町」

続いて、「少し編集」と「けっこう編集」した動画も見てみました。門脇さんがよく使う動画編集アプリとしては、以前は「Premier Rush」でしたが、機種を変えたら動画がうまく読み込めなくなり、今は無料の「VN」というアプリを使っているとのことです(その後、今は再び「Premier」を使っています)。ほぼ編集無しと比べると、作り込んだ感じが伝わってきますが、例えばカムイさんの台車の動画では、編集無しだからこそ、外をまわってきたリアルな時間の長さがそのまま伝わって来ます。どの編集方法が合っているかは動画に映っている人や、何を伝えたいかによって変えると良いのではないかと思いました。

質問タイム・意見交換

最後に会場のみなさんとともに、質疑応答や意見交換を行いました。

Q.アカウントはどのように使い分けているのですか?
A.門脇さん:私は10個以上のアカウントを使い分けています。たしかにいろいろなプロジェクトがあるとアカウントは煩雑になりがちなのですが、事業所や団体でやるなら、団体のアカウントをつくると良いと思います。一方、視聴者目線で考えると、その動画が自分にとって興味があるかどうかの方が大切なわけで、どこの団体のアカウントなのかはそんなに重要ではないかもしれません。

Q.SNS(YouTube、Instagram、TikTokなど)のアカウントは誰が開設するのが良いでしょうか?(個人の場合、団体の場合から)
A.
せこさん:編集作業は大変ですが、面白いので、利用者さんも自分で編集できると良いのではないでしょうか。
門脇さん:アート・インクルージョンでは、個人でアカウントをつくって積極的に発信している人もいますが、心無いメッセージが来て悩むこともあります。そういうときは一緒に使い方を考えます。

Q.映る人の肖像権などどこに気を付けると良いでしょうか?親御さんにも許可をとっていますか?
A.
門脇さん:アート・インクルージョンでは、団体に所属したときにアーティスト契約を結んでいます。名前は本名なのか、アーティスト名を考えるのか、SNSなどでの顔出しはOKかもこのときに決めてもらっています。契約内容はいつでも変えられます。知的障害のある人の場合は、ご家族も一緒に説明します。
最初は家族から許可が下りない場合もありました。障がいがあるということをネガティブにとらえられていたり、あるいはひとに見せられるレベルではないと考えていらっしゃったりしましたが、わたしたちの表現活動はうまい/へたではなく、そうした考え自体がばかばかしくなるほどにその人の生き様そのものが素晴らしい様子が活動を通して見えて来て、それがご家族の理解をうながし、途中から顔出しOKになる方もいました。今ではほとんどの方が顔出しOKです。

Q .動画に出ている方がとても自然だなと思ったのですが、自然体に撮るコツはありますか?
A.
門脇さん:なにかを撮るためにやっているのではなく、その人といっしょに何かをしたり、友達になることが目的で、そこから始まって、たまたま映像になっているというところがあります。時間はかかるかもしれませんが、撮ることを目的にするよりも、関係性をつくってから撮ってみるというのが良いのではないでしょうか。

会場の様子。参加者数名と門脇さんが写っている
会場の様子

おわりに

参加者から「作品として動画を撮りたいなと思った」といった感想が聞かれたり、この研修の翌日、さっそくSNSに動画を投稿した人を見かけたりしました。また研修参加者の中に、ピアサポート関係でつながったアーティストの公開制作などの記録映像を撮っているなど、アーティスト同士のつながりも知ることができました。
研修後に門脇さんとやりとりする中で、「震災後、本当にいろいろな方とお会いするようになりその出会いが映像を使うことでとりあえずいっしょに何かをするきっかけになっていったということに今回まとめてみて気付かされました」という文章が心に残っています。映像はそれだけで完結するものではなく、つくる中で外に出たり今まで知らなかった人と出会ったり、人と関わるという切り口でその表現の面白さがあることを、この研修で共有できていたら良いなと思います。

参加者の声(アンケートより)

・えいぞうにきょうみがでました。明日休みなので、さつえいへんしゅうしてみます。
・簡単に投稿できる方法や様々な活動について知れて良かった。撮影不可の方も多いので関係性をつくりながらできるようにしたいです。
・映像という表現方法は古くからあったと同時に、アート・インクルージョン含め日本での実例を見ながらその面白さを知ることが出来ました。
・何か映像作品を作りたいと思った。
・現在自身が描いた作品を使って動画を作成しており、今後の投稿に役立たせていきたい。効果的にみせる方法を開拓していきたいと思いました。BGMのことが聞けたのが大きな収穫だと思っています。

レポート:高橋梨佳(NPO法人エイブル・アート・ジャパン)

(※)https://art-in.org/peersupport/index.html
「宮城県・仙台市障害者ピアサポート研修始まります。」、アート・インクルージョンウェブサイト(2026年3月30日最終アクセス)

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