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障害者芸術活動支援センター@宮城

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芸術文化活動の支援方法に関する研修・「県南地域編」報告

2020.03.27    報告

障害者芸術活動支援センター@宮城 研修報告
芸術文化活動の支援方法に関する研修・「県南地域編」報告
日時:2019年11月26日(火) 13:30~16:00
会場:白石陽光園(宮城県白石市福岡長袋小倉山14−2)

このプログラムは、宮城県内で実際に芸術文化活動を実施する団体と障害者芸術活動支援センター(以下、支援センター)がともに企画し行うものです。2019年度は、社会福祉法人白石陽光園のご協力のもと、研修を実施させていただきました。

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参加者は14人(講師・運営スタッフ6人含)で、白石市、石巻市、利府町、仙台市からでした。参加の動機は、芸術文化活動というと職員の得手不得手が影響するためどんな工夫や視点が必要かを知りたい、限られた施設(職員)の時間のなかで一人ひとりに会ったものをどう探していくかを知りたい、創作に行き詰まりを感じているため視野を広げたい、芸術文化活動の価値や意味とは何かを知りたい、などでした。

●プログラムA フィールドトリップ「アトリエうららのひみつ」
現場ツアー案内役:小岩泰恵さん(社会福祉法人白石陽光園)

プログラムの冒頭、ファシリテーターから参加者のみなさんに「なぜ、福祉施設で芸術文化活動に取り組む必要があるのか」という問題意識を自分事として考えてみてほしいと感じたため、「あなたにとって生活を充実させる文化活動やスポーツ体験はありますか」と尋ねてみました。
子どもと過ごすサッカーの時間、演劇やミュージカルを鑑賞すること、フラワーアレンジメントや音楽に親しむこと、子どもと映画を観に行くこと、仕事や家のことのほんの隙間の時間に切り絵やスクラッチアートをすること、ライブや音楽フェスティバルに行くことなど、たくさんの体験がはなされました。そして、ファシリテーターから、障害のある人たちも同じように生活のなかで文化やスポーツをすることはひとつの喜びでありまた権利であり、もし本人が障害があることにより情報の不足や機会の不足にあるとき、それを支えるのが社会福祉施設の役割のひとつであることを伝えました。また著名な作家になるとか、話題になるとかは結果のことであり、日常でいかに充実した体験ができるか、それをともに探す醍醐味はこの仕事でしか味わえないことを共有しました。

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次に会場となった白石陽光園の現場をみなでまわりながら、ここで取り組まれている芸術文化活動をよく観察し、後半のディスカッションをするためのツアーにでました。ある部屋では、段ボールちぎりを一日中する方がいました。この活動をすることがその人の安定につながり、またその行為として生まれてきた段ボールの山を、ほかの部屋ではさらに細かくして色染めしてちぎり絵の手法で大きな作品に仕立てている様子をみました。ある部屋では、施設を彩るために薄葉紙で花をつくったり、段ボールを丸く切り抜きそれに絵の具やペンで装飾を施したモビール、輪っかづくりをしていました。その他、布やフェルトでお花を創ったり、クラフトバンドでかごを制作したり、生け花や書道に取り組むなどの風景がありました。
ツアーの後には、会議室に再び戻り、案内役の小岩さんから白石陽光園には生活介護のメンバーが70名、入所支援は50名の方がおり、平均年齢は53.7才と高齢化しつつある現状の紹介があり、ツアーでまわった部屋以外に、どのような活動や工賃体系かをお話いただきました。また開園当時からの想いとして「どんなに障害の重い方たちでも働くことを重視して支援することが社会との接点をもつこと」とし、そんななかで芸術文化活動にも取り組んだ経緯もお話いただきました。落ち着きのなかった方がペンをもてば集中する、また作り出したものを社会にアウトプットするために今でも手作りのカレンダーを制作し、販売・寄贈している長い積み重ねの話が印象的でした。

●プログラムB 講座「みて・これ・アート!?障害のある人の表現活動を見出す」
講師:黒田龍夫さん(社会福祉法人石巻祥心会) 佐竹真紀子さん(一般社団法人NOOK)
ファシリテーター:柴崎由美子(NPO法人エイブル・アート・ジャパン)

石巻祥心会で芸術文化活動に取り組む黒田さんが、開口一番に「(今ここでぐるり見聞してきたなかには)これ、なあに? がないんだよな。終わり(結果やカタチ)をもとめないのが芸術活動だと思うのだけど…」という問題意識を話されました。ここを出発点にして、白石陽光園の職員からも「心から出してくるものを認めることは大切にしている。しかし、賃金や社会参加を考えると何かを売る必要があってそこにジレンマがある。本当は高齢になったら好きなことをして、ゆっくり落ち着いてほしいけど、それだけでは制度のなかでやっていけない」というとてもリアルで重要なテーマに話が至りました。

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そこで、もう一人の講師である佐竹真紀子さんから、ひとつの事例として展覧会「レコメン堂」の事例を通して、表現をどのようにまなざすのか、について話題提供をいただきました。レコメン堂は、「レコメンド」すなわち「推薦する」ことによって成立する作品(表現)を、それその表現と推薦文によって展示する試みです。約3か月の募集期間を経て50組の推薦者+表現者が出展。そのうち結果的に、なんと約20組が障害のある人の表現に関するものだったといいます。その内容は、利用者から職員につづられる手紙であったり、母親が見守る子ども(障害児)の絵日記のような膨大な描画の記録であったり、毎日施設の玄関に設置されるさまざまなモノ(障害のある人の行為による)を記録する職員の写真などで、みなさん「へー、これもひとつの作品(表現)として展示されるものなのか」と関心してみていました。そして佐竹さんからは、ここで大切なのは、なぜその人はそれをしているのか、その世界観とはなにか、への問いであり、ここにその行為を認めること、肯定していくこと、暮らしのなかにある営みを掘り下げることでみえてくることがあるのではないかと語りました。また、障害のある人たちのレコメンド作品(表現)には、とくに、その表現している人と見ている人の関係性が色濃くあり、「障害者としてではなく‘その人’としてみてみる」ことの豊かさがあることが紹介されました。そして佐竹さんは、ツアーでみたことを今ここでみながディスカッションしていることこそがきわめて重要であるといい、メンバーへの気づきなどを社会福祉施設内で、展覧会「レコメン堂」として作品とともに推薦文を添えて展示してみるのも、おもしろいのではないかと提案しました。

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これをきっかけに黒田さんからは、「生きる術の幅を広げてほしい。絵を描くだけでなく、どこかへ行ったり、土日に遊びに触れたり、日々の作業を(職員の特技を活かして)音楽にのせてみることもできるのではないか」との意見がでました。また参加者からも、「たとえば毎日決められた場所で同じ人たちが同じ作業をするのではなく、スペースでできることを提案して、みなが今日はこの部屋、今日はこの部屋などと自由にすることを選ぶ、やってみる、組み合わせを変えてみるなどもできるのではないか」、「スタッフが介在することもあれば、個性を見守り手をださないこともあるという風にメリハリをつけることが必要だと感じた」、「芸術文化に関わることのスタッフの意識のレベルがあがるようになるといいな」などの積極的な意見や考え方の提案がありました。
もはやこの日は講座でなく、なぜ私たちは福祉の現場で表現活動をするのか、というてつがくカフェのような場になりました。しかし、参加者みんながモヤモヤをもち、自分たちの活動をどうしていくべきかという問いを持ち帰ることができたことは重要だったと感じています。小さな集まりの場でしたが、確実に次のステップや実践を結ぶに至る大切な濃い時間になったと感じています。

参加者のアンケートを一部抜粋し紹介します。
・芸術をやる目的はどこにあるか?とても大きく重要なテーマでした。施設に持ち帰って職員ともこのテーマについて意見交換したいと思います。
・今まで、芸術=絵、雑貨等しか思いつきませんでしたが、今の施設での何かできること、少ない時間でも出来る、作業の中で出来ることを見つけたいと思います。そして自分が楽しめるように支援していきたいと思います。
・作品とは記憶の掘り起しである。その利用者とのコミュニケーションをどのような手段でとっていき、利用者が興味をもち動き出す…。黒田さんが関わっている強度行動障害の方が集中して作品作りをしている話、帰省時に施設から自宅に帰るときの電車の絵はその方にとっては母親との思い出として心に焼き付いている話が印象的だった。
・黒田さんの利用者への関わり方として、描いているときは手をださずに見守りほめる話をしながら、描く雰囲気づくりなど、今後試してみようと思いました。また参加している方のさまざまな意見をきくことができて良かったです。
・作業場では何か作品をつくらなくてはという思いから、支援者がすべて工程を考え利用者に参加してもらっていましたが、やはり利用者主体の作品づくりにはほど遠く、これでいいのかと悩んでしまうこともありました。今日の話をきいて、もう少し利用者自身の内に秘めた可能性を引きだせる支援等を行っていきたいと思いました。

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