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障害者芸術活動支援センター@宮城

お知らせ

芸術文化活動の支援方法に関する研修・「県北地域編」報告

2020.03.15    報告

障害者芸術活動支援センター@宮城 研修報告
芸術文化活動の支援方法に関する研修・「県北地域編」報告
日時:2019年11月14日(木) 13:00~16:00
会場:ギャラリーくらら、アトリエうらら、スタジオ土音(宮城県石巻市中央町3丁目65-1)

このプログラムは、宮城県内で実際に芸術文化活動を実施する団体、地域のこうした活動の環境醸成にかかわるコーディネータ、そして障害者芸術活動支援センター(以下、支援センター)がともに企画し行うものです。2019年度は、社会福祉法人石巻祥心会と生涯発達支援塾TANEの櫻井育子さんのご協力のもと、研修を実施させていただきました。

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参加者は19人(講師・運営スタッフ7人含)で、気仙沼市、東松島市、登米市、石巻市、仙台市から障害者福祉施設職員が集まりました。参加の動機は、これから生活介護事業所で芸術文化活動をはじめたい、活動の充実をはかりたい、作品を発信できていないので参加してみた、芸術文化に関するネットワークがあると知り参加した、などでした。


●プログラムA フィールドトリップ「アトリエうららのひみつ」
現場ツアー案内役:黒田龍夫さん(社会福祉法人石巻祥心会)

活動をはじめるきっかけ、実際の活動の様子、社会発信に伴う工夫や課題、などをリアルに見聞しながら、参加者それぞれが活動に活かすための視点を学び持って帰ってもらうことを目的に実施しました。
 社会福祉法人石巻祥心会は、2018年度に支援センターのネットワーク会議に参加。以後、県内外の研修や交流活動を通して、石巻市中心市街地にアートスペースおよびギャラリーを開設するに至りました。2019年度からは、ギャラリーに運営委員会を設置し、利用者の作品展示に留まらず、地域の方たちにも写真展や演劇の発表の場として利活用してもらい、芸術文化を通じてだれもが自由に表現しそのことを分かち合える土壌をつくりたいと活動しているそうです。

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アトリエは、社会福祉法人の利用者200名超が日替わりで交互に創作に打ち込める場となっており、絵画や陶芸、染めなどに取り組んでいました。また、ギャラリーは蔵を改装したもので当日は利用者の作品を壁面いっぱいに展示していました。またオープンしたばかりのスタジオ土音(どおん)は、板間の空間に50席ほどの観客を呼び込める小劇場のようになっており、ここでは主に太鼓や舞の練習、そして地域の方たちの会合や文化発表の場としての使用をスタートしたばかりとの話をききました。
 同じ敷地内に3つの機能がわずか1年のなかで設立されたなど、驚くことばかりでしたが、法人の利用者200人の環境をつくることの重さ、また地域の中核的な社会福祉法人として公益活動に従事することを理念において活動する必要性など、そのソフト部分の運営においては苦労も多いのだろうと、案内役の黒田さんによる緊張感のある語りからも感じました。

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 後半は、ギャラリーで実際の作品を鑑賞。その人がどのように創作をしているか、それによって本人がどのように変化し、発表によって家族や支援者、また地域住民の理解がどのようにかわったかなど、たっぷりと充実したトークとなりました。一方、語り手である黒田さんしか知らない、黒田さんしか語れないその情熱的なトークを、法人全体やギャラリー運営に携わるスタッフ全員に浸透させるために、組織内の今後の人材育成についても話題に及びました。
支援センタースタッフの意見として、芸術文化活動の意義を組織全体に浸透させていく、それは全国的にみても同じ課題であり、永遠のテーマであると感じます。なぜ芸術文化活動なのか、それによって誰の何がかわるのか、このテーマを絶えず議論し、個々人の懐におとすために、毎年、こうした新しい活動拠点でのフィールドトリップは大切だと改めて思いました。さらに、支援センター担当者としては、実践者が組織内で活動の意義を伝えていくために必要な組織内の研修や仕組みについても事例を紹介する必要性を感じました。


●プログラムB 講座「みて・これ・アート!?障害のある人の表現活動を見出す」
講師:松﨑なつひさん(宮城県美術館学芸員)、高田彩さん(ビルドフルーガス代表)
ファシリテーター:櫻井育子さん(生涯発達支援塾TANE代表)

 生まれた作品を、どのように見出し、展示にむすびつけたら良いのでしょうか。展示に際して必要な視点や考え方を、具体的な実践を通してまなぼうと企画しました。この講座では塩釜市を拠点に芸術文化による社会教育にも携わる高田彩さんと、2016年度以降支援センターの、作品の評価、ネットワーク会議、展示会のひらき方に関する研修に携わっている宮城県美術館の教育普及学芸員の松崎なつひさんに講師を担当していただきました。そのプログラムの意義や内容を確認し進行する役割として櫻井育子さんが伴走しました。

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 まずは座学として高田さんによるレクチャーです。生み出された作品を紹介するために、なぜ、いつ、どこで、何を、どのように伝えたいのか、その企画を丁寧におさえる重要性についての話がありました。また、何を、どのように「整理する」のかという具体事例が示され、「表現方法で整理する」「表現の手段で整理する」「モチーフで整理する」(たとえば人・モノ・花など)などの実践例が伝えられました。さらに、「展示会とは価値を気づかせる場であり、その価値が共有されると何かが生まれる」という重要な視点が示されました。そのためには、例えば「プロセスをみせる~施設の人にとっては当たり前のことも作品を観る人には新鮮なことである」ことが紹介され、表現のプロセスをみてほしい場合は映像の展示を添える場合もあり、プロセスをみてまた作品に戻ると見え方がかわったり表現に付加価値をつけることもできるなどの具体的な人の心の動きや鑑賞による醍醐味も紹介されました。さらに、「空間でわける~作品の集積をみせたいのか、一点一点をじっくりとみせたいのか、一人の作家の全体像をみせたいのか」などでも展示の編集がかわるという視点について説明を受けました。

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 休憩をはさみ、参加者は、ABCのチームにわかれてギャラリーくららへ移動。実践のお題は「あるコンセプトをたてて壁面に作品を展示してください」というもの。大きく3面から作品を取り外して壁面をあけ、取り外した作品は、各チームでの実践的ワークショップに使用させていただきました。はじめて顔をあわす参加者同士ですが、「整理する」「価値を伝える」ことを念頭に、一生懸命作品をみて、時には作品を構成する作者の背景について黒田さんに尋ねながら、作品を選び、コンセプトをブラッシュアップしていくさまが続きました。高田さんと松崎さんは時折、「展示する作品を選ぶことは、すなわち展示しない作品を選ぶことでもあります」「展示のコンセプト(大切にしたいこと)をしっかり互いに言葉にしてください」などグループの活動を見守り、ときに軌道修正していきました。またギャラリー内にある展示台を活用した立体作品の展示、蔵を改装した壁面の梁を利用したテキスタイル作品の展示など、オプションの展示とコツについてもその技術が共有されました。わずか40分ほどの時間でしたが、3つのチームによる作品展示が完成し、これを各々紹介しながらの講評が行われました。


参加者のアンケートを一部抜粋し紹介します。
・芸術や文化というと堅苦しいと思っていましたが、自由でいいのかとハッとしました。
・石巻祥心会のくららにはじめてきて、絵の解説や絵の由来をききながら鑑賞できたことは楽しかったです。また絵の飾り方で作品をさらに生かすことができることを学べたので、今後の活動に行かせていければと思います。
・見るのも聞くもの全てが勉強となりました。正解というものはなく、いろいろな表現の自由があることを改めて学ぶことができました。
・作品の展示というのは、いろいろ考えられて行われていることを学びました。
・普段生活するなかで芸術文化にふれる機会はあまりない状況ですのでとても参考になりました。どのように作品をとらえ、その作品を表現するか考え、その作品を活かせる見せ方、展示をするのか勉強になりました。
・まったく学んだことのない展示についてのお話をきくことができためになりました。今後、何かを展示する機会があった際には思い出しながら参考にしたいと思います。
・実際の展示を4人で決めるということも難しいと感じました。たくさんの作品の中から、テーマを選ぶなどいくつか考えることもあり展示は奥が深いと思いました。研修会で出会った方とも研修を通して知り合えていい時間でした。
・ひとりひとりの作品をどのような空間で展示していけばよいのか。また、作品へ込められた思いを大切に展示することが必要とのことも学べました。参加者同士でグループワークショップを行う事により、交流を深めると共に意見を述べ合える機会となりました。

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